●Sweet Christmas
「あ、ケーキを予約していた相馬です」
デート気分で出雲と一緒にアンティークなカフェにむかい、相馬が結社用に注文しておいたケーキを受け取った。
ケーキはクリスマス仕様の箱に入っており、ラベルには『生ものですので、お早めにお召し上がりください』と注意書きが書かれている。
「何だかちょっと楽しみですね」
楽しそうに鼻歌を歌いながら、出雲が相馬の後をついていく。
「覗き見したら駄目だよ」
念のため、釘をさしておく。
「砂糖菓子とかついていますかね?」
どうやら、話を聞いていない。
既に出雲の心はケーキにターゲットをロックオン。
この状態のままだと、結社につくまで、ケーキが安全という保証は無い。
「せっかくだから、ここで食べようか?」
もちろん、結社用のケーキを食べるわけでなく……。
「ほ、本当ですか!?」
出雲の視線が相馬の持っているケーキの箱に向いた。
これじゃない、と相馬がケーキの箱を隠す。
この状況でケーキの箱に視線が向くのは、仕方の無い事なのかも知れない。
「うん、その証拠にふたり分のケーキを頼んであるよ」
ケーキの箱を守りながら、相馬が出雲と向き合うようにして席に座る。
「それじゃ、私はクリームパイをいただきますね」
テーブルの上に置かれたメニュー表を眺め、出雲がクリームパイを注文した。
ちなみに相馬はモンブラン。
それから、しばらくして……。
お目当てのケーキがやってきた。
ふたりとも幸せな気持ちになりながら、目の前のケーキを食べていく。
特に出雲はケーキを食べて夢心地。
左頬にクリームがついている事さえ気づかず、ケーキをパクついている。
「ほらほら、そんなに慌ててケーキを食べると、喉につかえて息が出来なくなっちゃうよ」
そう言って、相馬が出雲の頬についたクリームをペロリ。
「えっ……? いまのは……」
予想外の出来事に驚く出雲。
それ以上、言葉が続かない。
恥ずかしさと混乱で、顔は真っ赤。
「えっ? たぶん気のせいじゃないのかな?」
そのため、相馬がニヤニヤと笑い、さらりと答えを返すのだった。
| |