●初デートはクリスマスイヴに
ショーウインドウに映る、いつもと少し違う自分の姿。
ほんのりと赤に頬を染めるその顔には、人生初というくらい気合いを入れた化粧が施されていて。
洋服も悩みに悩んで。じっくり一週間かけて選んだ、勝負服。
もう何度目か分からない身だしなみチェックを終えた要は、彼との待ち合わせ場所に近づくにつれて、次第に早くなる胸の鼓動を感じる。
そして、クリスマスで賑わう街並みを歩くその速度が。彼女の逸る気持ちを十分に表していた。
一方、時間より早く待ち合わせ場所に到着している宗龍も。
普段しないような精一杯の正装をして、要の到着を緊張の面持ちで待っていた。
人生初めてのデート。この日のために集めた情報を懸命に頭の中で反復しながらも。
人の波の中に一生懸命目を向け、愛しい彼女の姿を探した。
そして――待ち合わせ時間、ジャスト。宗龍の心拍数が途端に跳ね上がる。
その青い瞳には、自分に駆け寄ってくる要の姿だけが映し出されていて。
彼女の満面の笑顔との距離がゼロになるのに、そう時間はかからなかった。
闇夜に煌めく、大きなクリスマスツリーの前で。
はあっと吐く息は白く、時折厳しい冬の風が吹き抜けるが。
ぎゅっと腕に抱きついた要の身体を、カチコチながらも一生懸命に受け止めて包み込む宗龍。
じわりと感じる、お互いの体温。
恋愛というものに慣れていないながらも、何もかもが初々しく新鮮で。初めて感じるあたたかさ。
だが、楽しいデートが終わりに近づいていることも、ふたりは分かっていた。
宗龍はおもむろにあるものを取り出して、そっと、要の首に掛ける。
「これは、その、くりすますぷれぜんとでやす……気に入ってくれるといいのでやすが……愛してやす。要さん。その……寒くはありやせんか?」
要の首元で光るのは、シルバーのクロスとリングを重ねがけしたシンプルな銀のネックレス。
「ありがとう、一生大事にする」
頬をほのかに染めて、要は宗龍のクリスマスプレゼントをその瞳に映して。
自分の身体を今までで一番強く抱きしめる宗龍に微笑んでから。
コクンと頷いて彼の胸に身体を預け、ぎゅっと抱きしめ返したのだった。
「とってもあったかいよ。心も体も」
キラキラと輝くクリスマスツリーに照らされながら。
お互いの温もりと今の幸せをかみしめるように、強く抱き合うふたり。
そして、要の胸元で小さく揺れながら光るリングには。
『Eternal love is transported to you』――永遠の愛を貴女の元に運びます。
そんな精一杯の宗龍の気持ちが、刻まれていた。
| |