高碕・愛衣 & 桂田・レオ

●聖夜はちょっぴり素直に

 仲間が騒ぎ盛り上がっている教室を抜け出してきたレオと愛衣。
 抜け出した先は、隣の教室。
 灯りはつけずに、窓から学園の盛り上がっている様子を眺める。
「クリスマスって良いねぇ。街中が賑やかで楽しくなるさねー」
「そうね。みんなで騒ぐのも、楽しかったわ。……それに。今年はレオくんと一緒だから、余計に、ね……」
 外の様子にはしゃぐレオに、微笑む愛衣が「初めてのクリスマスを一緒に過ごせるのが嬉しい」と照れながらも言葉にする。
 そんな様子の愛衣がとても可愛いと思ったレオは、「かっわいー」と、言いながら、友人達と交わすように愛衣を抱きしめる。
「俺も、愛衣と過ごせて楽しいわよ!」
 満面の笑みで、腕の中の愛衣の顔を覗き込むレオ。
 そんな彼に抱きしめられた愛衣は少しうつむき、耳まで真っ赤にする。
「レオくん……。キス、しましょうか」
「へ? え、な、き、キスぅぅ!?」
 キスなんてした事のない、レオは愛衣からの言葉に、彼女を抱いていた両腕をぱっとはなし、飛び退ってしまう。
「どうしたの愛衣! そんなこと言い出すなんて、何か裏があったりしねぇわよね!?」
「なっ、ばかね、何もないわよ!」
「ただ……いいじゃない、クリスマスくらい、ちょっと素直になってみたって……」
 照れた顔の二人は、照れた顔のまま、見つめあう。
 そのまま愛衣は指示かに瞳を閉じる。
 そしてレオは、彼女の肩を優しく抱き寄せて唇を重ねようと、愛衣の顔に自分の顔を近づけていく。

 唇が重なろうとした瞬間。
「レオー! 愛衣ー! どこ行ったー!?」
 教室の外から響いてくるのは、隣の教室にいてた仲間の声。
 その声に固まってしまうレオと、驚き閉じていた瞳を大きく開けて、瞳を瞬かせる愛衣。
 近すぎる互いの顔に、もう耳も真っ赤で、咄嗟に愛衣はレオを突き飛ばす。
「ごっ、ごめん! でもほら、行かなくちゃ!」
 レオを突き飛ばしてから状況に気が付いたが、どうすることも出来ず取り合えずあやまりながら、レオの手を引いて教室を出て行く。

 甘い時間は、またもう少しお預け。




イラストレーター名:たぢまよしかづ