弥栄・楸 & 蓮城・闇奈

●2人と絵本

 既に外は暗くなっており、ぱらぱらと雪がちらついている。
 楸が自分が団長を務める結社のとある部屋におり、肘掛のついた椅子に座り、暖炉に当たって本を読んでいた。
「楸ー! 遊びにきたぞー!!」
 その沈黙を破るかのようにして、闇奈が勢いよくドアを開けて、部屋の中に入っていく。
「……あ、闇奈さん?」
 満面の笑みを浮かべて部屋の中に入ってきた闇奈とは対照的に、楸は少し驚いた様子できょとんとした表情を浮かべた。
「あのな、楸にプレゼント持ってきたぞ!」
 そんな事などおかまいなしに、闇奈がずいずいと話を進めていく。
「……犬のぬいぐるみ……?」
 闇奈から貰ったもふもふとした物を眺め、楸が不思議そうに首を傾げる。
 きゅるるんとした円らな瞳を見ていると、思わず吸い込まれてしまいそうになるほどの愛らしさ。
「楸こういうの好きだろ!」
 とても良い笑顔を浮かべ、闇奈が楸の顔を覗き込む。
 そのため、楸も優しく彼女に微笑みかけ、お礼を言ってプレゼントを渡す。
「私からも闇奈さんに……、プレゼントです」
 それは一冊の小さな本。
「わ、ほんとか!?」
 闇奈は嬉しそうにその本を受け取ると、床に置いてあった本の山に腰掛け、ぱらぱらと本を読み始めた。
 その姿を見て楸もホッとしたのか、途中まで読んでいた本の続きを読み始める。
 それから、しばらくして……。
「中々面白かったぞ!」
 本を読み終えた闇奈が、その場から楸に声をかける。
「……」
 だが、楸からの返事がない。
「……楸?」
 ゆっくりと立ち上がり、不思議そうに楸の様子を窺い、闇奈が聞き耳を立てる。
 そこで聞こえたのは、楸の静かな寝息。
 闇奈は楸を起こさないように再び本の山に腰掛け、椅子に掛かっていたマフラーの存在に気づく。
 それは楸が普段巻いているマフラー。
 闇奈はそのマフラーを自分の首に巻き、『……暖かいな』と微笑みながら呟いた。




イラストレーター名:誘