菰野・蒼十郎 & 高宮・琴里

●Under the mistletoe

「……確か、この辺にあったはずなんやけど」
 琴里の手を引きながら、菰野が宿り木を探して歩く。
 開始前に宿り木の生えている目星をつけておいたので、それほど見つけ出す事は難しくないのだが、勘に頼る部分が大きいので、すぐに見つかるという保証はない。
 しかも、似たような景色が続いているので、目星をつけた場所をなかなか見つける事が出来なかった。
 だからと言って一緒に走り回るのも悪いので、彼女の歩くスピードに合わせて進んでいる。
「ひょっとして、あれじゃないんですかね?」
「いや、もう少し大きかったと思うんやけど……」
「それじゃ、あっちかも知れませんね」
 そんな事を繰り返しながら、歩くこと数十分。
 ようやく、ふたりは探し求めていた宿り木を発見した。
「あった、ここや」
 そこで菰野が深呼吸。
 ゆっくりと心を落ち着かせ、琴里と向き合うようにして、宿り木の下に立つ。
「約束……、覚えてますか?」
 きっちりと菰野に向き合い、琴里が小指を差し出した。
「……約束、ちゃんとずっと覚えとるよ」
 彼はその問いに迷わず答え、彼女の小指に自分の小指を絡ませ、結んだ後に指切りをし始める。
「ずっとず〜っと一緒です、ね?」
 菰野の顔を見つめて指切りを終え、琴里が彼の頬に優しくキスをした。
 途端に菰野の顔が赤くなる。
「……わいもやよ」
 突然のキスに驚きながら、菰野が恥ずかしそうに頬を掻いた。
 琴里にはそれがとても愛しく映ってしまい、クスクスと笑って、そのまま勢いよくギュッと抱きついた。
「大好きですよ」
 思わず口から出た言葉。
(「あかん。……素の標準語、出てもたねん」)
 慌てた様子で口元を押さえた。
 既に手遅れかも知れないが、反射的に身体が動いたようである。
「……私も大好きなのです」
 聞こえないくらい小さな声で答えた後、琴里は全身で幸せな気持ちを表現し、さらにギュッと抱きついた。




イラストレーター名:TANAH