六手・守王 & 水宮・真涙

●はじめてのデート

「……何だかあっという間に夜だね」
 イルミネーションに彩られた街中を歩きながら、真涙が満足げな表情を浮かべて、真っ白な息を吐く。
 守王とのクリスマスデートは、時間を忘れてしまうほど、あっという間に過ぎていった。
「それだけ楽しかったって事だろ」
 苦笑いを浮かべながら、守王が隣り合うようにしてベンチに座る。
 最近、守王は笑う事が増えてきた。
 それが何故なのかよく分からないが、彼女のおかげであるかも知れない。
「うん、確かにね。本当に今日一日、楽しかった」
 納得した様子で笑みを浮かべ、真涙が目の前に聳え立つ、ふたりでクリスマスツリーを眺めた。
 クリスマスツリーの飾りは、キラキラと美しい輝きを放ち、ふたりの心を和ませてくれた。
(「……そうだよね。守王が傍にいたから……」)
 今日一日の出来事を思い出し、真涙が改めて守王の存在がいかに大きいのかを実感した。
 守王と一緒にいたからこそ、クリスマスを満喫する事が出来たのかも知れない。
 逆に守王と一緒でなければ、ここまで楽しむ事は出来なかった事だろう。
「ちょっと、寒くなってきたね」
 寒そうに身体をぶるりと震わせ、真涙が自らの手を息を吐きかける。
 だんだん夜が更けてきたせいもあってか、随分と辺りが肌寒くなってきた。
「だったら……」
 彼女の言葉を聞いて、守王が少し考えてから、
「これで、寒くないだろ?」
 と、不意に彼女の手を繋ぎ、優しく微笑みかけた。
「そうだね」
 あまりの不意打ちに驚きつつ、真涙が照れた表情を浮かべる。
 守王の手からほんわかとした温もりが伝わり、次第に胸がドキドキと高鳴っていく。
「だ、だろ……」
 そのため、守王もつられて顔を真っ赤にさせ、辺りに気まずい雰囲気が流れた。
(「ど、どうしよう……」)
 不安な気持ちに心を包み、真涙が慌てた様子で顔を上げる。
 ……ふいにお互いの目が合った。
 それが何だか可笑しくて、互いに笑い声を響かせた。




イラストレーター名:雨月ユキ