●Merry Christmas
今日はクリスマス。
街は賑わい、恋人達は微笑み合う。
そんな日本のクリスマス。
でも皆が皆、会えるわけではなく、会えないカップルもいるわけで……。
本当なら一緒に過ごしたいクリスマス。
けれども互いの都合もあり、今年のクリスマスは、一緒に過ごすことは出来ないと一真は桜空に既に伝えていた。
だけど会いたい気持ちは変わらない。
クリスマス前後に現れ、サンタクロース姿の人を襲うゴーストを退治する依頼を受けていた、一真の依頼が終わる。囮を担っていた一真は、サンタクロースの格好のままバイクにまたがる。
向かうのは桜空の家。
途中、雪がちらちらと降りだした。
彼女の家に到着すると、バイクから飛び降りる一真。
「桜空! 桜空!?」
玄関の扉越しに彼女の名前を呼んで、扉を軽くノックする。
返ってくるものはなく、静まり返った桜空の家。
玄関には鍵もかかっていて、彼女が留守なのが分かった。
彼女はどこにいるのだろうと、連絡をしようとおもって取り出した携帯電話。
それは非情なことに、充電が切れており、いくらボタンを押しても何の反応も示さない。
こうなってしまっては、どうすることもできず、一真はその場に座り込む。
このままここで待っていれば、桜空は帰ってくるから。
依頼の疲れからか、一真は寝息を立て始めた。
雪が降り出したことは、バイト中のカフェから見ていた。
カフェのクリスマスは、沢山の客で賑わっていた。
忙しかったけれども、少し寂しい気分を紛らわすには丁度良かった。
そんなことを考えながら帰ってきた桜空の、足がぴたりと止まった。
自分の家の前。
サンタクロース姿の一真を見つけて。
「……逢坂さん?」
会えないといっていた彼。
どうしたのだろうと驚いているうちに、気配を感じたのか一真が目を覚ました。
「お帰り」
目が覚めれば目の前に会いたかった彼女がいて、一真は笑みを浮かべると用意していたプレゼントの箱を胸元から取り出し、笑顔とともに桜空に向かって差し出す。
会えないことは頭の中で理解できても、心のどこかは寂しくて。
けど、彼の姿を見て、言葉を聴いたとたん、そんな気持ちはどこかに飛んでいってしまう。
いつもの落ち着いた笑顔ではなくて、顔中に嬉しそうな笑顔で一杯にして一真に告げる。
「メリークリスマス」
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