黒獅・紀亜 & 青葉・響

●大好きな人から 大好きな人へ

 紀亜は世間知らずなので、サンタやクリスマスの事を知らない。
 少しでもサンタやクリスマスについて知ろうと思い、外をぐるりと回ってみたが、街や学園がどうしてキラキラしているのか分からなかった。
 そのため、紀亜は賑やかな街を離れて、少し落ち着こうと思い、響の部屋へとむかう。
 響は部屋の中で『清しこの夜』の英語バージョンを歌いながら、熱心に何かを磨いていた。
 その作業は紀亜が来ても変わらず、黙々と続けられている。
「何を、しているの?」
 紀亜が不思議そうに問いかけた。
「あとで分るよ」
 だが、響は何故か答えようとしない。
「今日は、外が、キラキラしていたよ」
 自分なりに外の様子を説明し、紀亜が不思議そうに首を傾げた。
「ああ、クリスマスだからな」
 何かを磨き続けながら、響がさらりと答えを返す。
「それじゃ、これが、クリスマス?」
 おぼろげにクリスマスについて分かってきたため、紀亜が確認するようにして質問する。
「いや、ちょっと違うな。分かりやすく言うと……」
 そう言って響がクリスマスについて説明をし始めた。
 その間も決して作業の手を止めず、せっせと何かを磨き上げている。
「それじゃ、サンタは?」
 何を言っても響が振り向いてくれなかったため、紀亜がふてくされた様子で口を開く。
「サンタについては、簡単だ。つまり……」
 紀亜にも分かるように噛み砕き、響がサンタについて説明し始めた。
 サンタについてはよく分かったのか、紀亜が『会って、みたい』と言い始める。
「本物のサンタさんはいないけど、今日は自分がサンタクロースだよ」
 今まで磨いていた装飾用の鍵に鎖を通し、響が笑みを浮かべて首に掛けた。
「わぁ、響、有難う……大事にするっ」
 ようやく響が自分をみてくれた事も重なって、紀亜が嬉しそうな表情を浮かべて、彼の頬にキスをする。
 そのため、響は慌てた表情を浮かべた後、まんざらでもない様子で頬を掻いた。




イラストレーター名:しろ