●初めてのクリスマス〜蜜月〜
クリスマスの日、ウルフィリアは鏡の部屋を訪れていた。
ベッドをソファ代わりにして腰掛けて、部屋の中を見ているウルフィリアの様子は、緊張からか、どこか硬そうに見える。
「そういえばウルフィ、クリスマスといえばこういう話があるんだぜ」
知ってるか? と話し始める鏡。彼女の緊張がほぐれればと持ちかけた話題は、ウルフィリアの興味を引いたようだ。楽しげに笑みを漏らしたウルフィリアの様子に、2人の話は弾んでいく。
「サンタクロース……鏡は……もうプレゼントは決めたの……?」
話題は少しずつ移り変わって、やがてそれはサンタクロースの事に変わる。
クリスマスイヴの夜、今夜プレゼントを持ってきてくれるはずのサンタクロース。ウルフィリアが尋ねると、鏡は少しだけ考える仕草を見せた。
「そうさねぇ……」
クリスマスの、プレゼント。
……すぐ隣のウルフィリアを見つめながら、鏡は口元だけで微かに笑んだ。
「こんなのはどうだ?」
言葉と同時に、ウルフィリアの視界がひっくり返る。
否。
どさっという音と共に、自分の体が倒れたのだとウルフィリアは気付く。
それは鏡の腕が、そっとウルフィリアを押し倒したから。
ベッドに仰向けになった彼女の事を、その上から鏡が見下ろす。浮かんだ笑みが、その瞳が、ウルフィリアの事を射抜く。
「かっ……鏡……プレゼントって……!」
真っ赤な顔で見つめ返すウルフィリアだが、鏡は「んー?」と、とぼけた顔で首筋にキス。その感触に、小さな悲鳴をあげて、それ以上の言葉を紡げない。
「んっ、ん……!」
キスを、落として。
いくばくかの時間を挟んで離れ、荒い呼吸を繰り返しながらも、ようやく落ち着いて鏡の顔を見た、その時。ウルフィリアは小さく囁いた。
「……欲しい?」
「うん」
欲しいに決まってる、と、鏡の指先はウルフィリアに触れる。ウルフィリアだけを求めてる。
何もかもが欲しい。そんなの、分かりきっている。
「……鏡」
ぎゅっ、と自分に触れたウルフィリアの指先を掴んで。そのまま強引に抱きしめて。自分の下に組み敷いて……ただただキスを落として――。
ふたりだけの長い夜は、まだ、始まったばかり……。
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