●一緒にいるとあったかいね。
輝くイルミネーションに彩られた街。
その中をゆっくり歩いていくのは、テオドールとリヒターの二人。
「とっても楽しかったね、テオさん」
「そうだね、寒中水泳はちょっと寒かったけど」
テオドールのその一言に、リヒターは目を丸くした。
「え? もしかして、テオさん、あの寒中水泳に行ってきたの?」
「目をしゃっきり醒まして、お腹も減らす。悪くなかったな」
それにと、テオドールは付け加える。
「リヒターくんと一緒に作ったシュトレンを、たくさん食べたかったしね」
そういえばとリヒターは思う。
あのとき、テオドールは、たくさんシュトレンを食い尽くしていたような気がする。
「……なるほど」
「なにがなるほどなのかな? リヒターくん」
テオドールの目が、ちょっぴり怖かったのは、きっと、気のせいだろう。たぶん。
何時からだろう。
空からは白い雪が舞い降りてきていた。
「テオさん、雪です」
「ん、今年もホワイトクリスマスだな」
微笑み返すテオドール。その優しげな笑みにリヒターも思わず笑みを返した。
「ちょっと……寒いね」
寒さが背中を押すように、リヒターはその体をそっと、テオドールへと近づける。
「じゃあ、こうすればあったかいかな?」
テオドールもまた、リヒターの肩を抱き寄せた。リヒターは驚きつつも、その心地よさに瞳を細める。
「あったかいね」
「一緒にいると、かな?」
「え、えっと……」
テオドールの言葉にどきまぎしながら。
でも、この温もりはきっと、忘れないから。
雪の舞う町の中で。
二人はそっと寄り添いながら、帰ってゆく。
楽しかった思い出と、暖かい温もりを心にとめて……。
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