●holy days
クリスマスパーティで、人気のいなくなった空き教室。
いつもは生徒でごった返して騒がしい校舎も、まったく人気がないと錯覚してしまうほどの沈黙に包まれている。
そんな中、恵太とさやかは、今までの学校や友人、先生の話、将来の事、二人の思い出などを語りあっていた。
「付き合い始めて、もうすぐ2年か」
しみじみとした表情を浮かべながら、恵太が彼女との思い出を振り返る。
まるでアルバムをめくるようにして、今までの記憶が写真となって心の中で浮かぶ。
そのひとつひとつが、恵太にとって大切な記憶。
「……本当にあっという間だったね」
恵太の顔を見つめながら、さやかがクスリと笑う。
銀誓館学園の生徒として、最後となるクリスマスイブ。
もうすぐ恵太と一緒にいられる時間も少なくなる。
恵太は国立大学に受験。
さやかは料理の腕を活かして就職。
それぞれ違う道を歩むので、今まで通りとはいかなくなる。
「ああ、本当に……」
何処か遠くを見つめながら、恵太が2年前の出来事を思い出す。
2年前の秋、恵太は牌の音でさやかに出会った。
そして、彼女から告白されたのが、冬……。
……彼女は断られると思っていたらしい。
あの時はハッキリと分からなかったが、今では運命的なものを感じている。
かけがえのない存在。
最高のパートナーであり、最愛の人……。
色々と表現する言葉はあるかも知れないが、その時からお互いに好意を持っていた事は間違いない。
「それよりも私はプロポーズされた事の方が驚いたけど……」
苦笑いを浮かべながら、さやかが恵太に視線を送る。
恵太からプロポーズされたのは、夏。
……その時に流した涙。
あの時の記憶は、彼女にとっての宝物。
「そ、そうか。そう言われると、ちょっと恥ずかしいな」
本当はちょっとどころではなく、物凄く恥ずかしかった。
なので、もう一度同じ台詞を言えと言われても……、言えない。
あの時、あの場所だから、言えた台詞。
「そ、そんな顔をしないでよ。こっちまで恥ずかしくなるから」
そのせいで、ふたりとも顔が真っ赤になった。
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