●このまま朝まで…
ダンスパーティを終えた後、ふたりは瑠璃家の実家である神社を訪れ、境内の賽銭箱前にある階段部分に腰を掛けていた。
「……やっぱ、二人で、となるとここだよな」
真っ白な息を吐きながら、昇一郎がしみじみとした表情を浮かべる。
「そうですねぇ~……、やはり、ここが落ち着きますぅ~」
瑠璃家も小さくこくんと頷き、昇一郎と同じように真っ白な息を吐く。
「……もっと、近くに寄っても良いか?」
クリスマスプレゼントであるマフラーを瑠璃家にかけ、昇一郎も自分の首に巻きつけて彼女の肩に手を置いた。
「良いですよぉ」
にっこりとした笑みを浮かべ、瑠璃家が昇一郎に身をゆだねる。
「さっき言い損ねちまったけど……そのドレス、似合ってるぜ。凄い、可愛い」
瑠璃家に寄り添いながら、昇一郎が恥ずかしそうに頬を掻く。
「うふふ、ありがとうございますぅ~。 会場ではぁ~、踊るので手一杯でしたからねぇ~」
会場での出来事を思い出し、瑠璃家がクスクスと笑う。
「まぁ、はじめてにしちゃ、上出来だった、かな……?」
自分なりに瑠璃家の腕前を評価し、昇一郎がボソリと呟いた。
「……そう言えば。瑠璃家への初っ端のお誘いが温泉だったな。……あれ? もしかして俺、相当なコトやらかしてねーか……?」
ハッとした表情を浮かべ、昇一郎が気まずい様子で汗を流す。
あの時はそこまでやったという感覚はなかったが、冷静になって考えてみると、とんでもない事をしたような気がする。
「ふふふ……、今気付いたんですかぁ~?」
と瑠璃家。
そのため、昇一郎はさらに動揺し、
「ちょっ、わっ……、今思い返すと本気でアレだな俺!?」
と答え、顔を真っ赤にしてうろたえる。
そんな昇一郎を、瑠璃家が微笑ましげに眺めた。
「その……、なんてーか。……今更照れんのも、ってトコだけど……す、好きだぜ、瑠璃家」
途端に恥ずかしい気持ちで一杯になり、昇一郎がコホンと咳をする。
「うふふ~……、耳まで真っ赤にして、かわいいですねぇ~。私も……ですよぉ……」
瑠璃家もそれに応じるようにしてコクンと頷く。
「今年で銀誓館は卒業しちまうけど……、これからも、変わらずにゆっくりやってこうな」
満点に輝く星空を眺め、昇一郎が口を開く。
「はい~。 私たちらしく、ゆっくりやって行きましょぉ~」
そして、ふたりはお互いの絆を強めるため、そっとキスをかわすのだった。
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