●聖夜の恋人たち
「ごめん、先輩。待たせちゃった?」
激しく息を切らしながら、未玲が不安そうに尋ねる。
待ち合わせ場所として指定されていた公園には、飾り付けられたツリーがあり、その下にあるベンチに座って麗那が彼女を待っていた。
「大丈夫よ。さっ、座って」
優しくそっと微笑みかけ、麗那が彼女をベンチに座らせる。
「先輩、今日は寒いね……」
未玲は座って息を整え、軽く身体を震わせた。
「そうね、今日は一段と冷えるわね……。それならミルクティーても飲む? 身体があたたまるわよ?」
持参した携帯用の魔法瓶を取り出し、麗那がカップに注いだミルクティーを彼女に渡す。
未玲は、そのカップを両手で受け取り、冷ますように息を吹きかけ、ゆっくりと口に含む。
「はふ……、あったか〜い」
舌が火傷しないようにゆっくりと飲み、未玲が幸せそうに溜息を漏らす。
麗那が淹れてくれたミルクティーのおかげで、すっかり冷え切っていた体が、ほんわかと暖まってきた。
「それじゃ、もっと暖かくしてあげる」
そう言って麗那が彼女の身体を抱き寄せる。
「にゃっ!?」
驚いた表情を浮かべ、未玲が目を丸くした。
「まだ、驚くのは早いわよ。ほら、クリスマスプレゼント」
手編みのロングマフラーを袋から取り出し、麗那が彼女の首に巻いていく。
「先輩……ありがとう……」
マフラーの温もりを感じながら、未玲が勢いよく麗那に抱きついた。
そのため、麗那もニコッと微笑み、彼女の身体をギュッと抱き返す。
そして、空からは雪が……。
「あ……、先輩……雪……」
ポツポツと降り始めた雪を眺め、未玲がゆっくりと空を見上げる。
「そうね……」
そう言ってふたりはしばらく時間を忘れ、暫く雪とツリーの幻想的な光景を眺めた。
「未玲ちゃん」
不意に麗那が口を開く。
「なぁに?」
その言葉を聞いて、未玲が首を傾げ、彼女のいる方に向く。
「未玲ちゃん、愛してるわ……」
少し恥ずかしそうな表情を浮かべ、麗那が彼女に愛を囁きかけた。
「うん……、ボクも、麗那先輩の事、愛してるよ」
未玲も顔を真っ赤にして、彼女の気持ちを受け入れる。
そして、ふたりは見つめ合い、そっと唇を重ね合わせた。
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