●れっつ!くりすますぱーてぃー
シンシンと静かに舞い散る雪が、窓の外の景色を白に染めている。
そんなホワイトクリスマスの夜。
「かんぱ~い!」
「乾杯ですにゅ~♪」
暖かい室内に響く、カチンと鳴る音。ジュースの注がれたお互いのグラスが触れ合って、ふたりに笑顔が零れる。
テーブルには美味しい料理が並び、天辺に大きな星が輝く背の高いクリスマスツリーは綺麗に飾りつけがしてある。
目の前には、純粋にパーティーそのものを楽しみ、元気一杯にはしゃいでいるリューン。
そんな彼の様子を見つめ、相変わらず口数の少な目な茜であったが。
内心は――嬉しくて、飛び跳ねたいような気持ち。
何せ、本当に大好きなリューンとふたりだけで、楽しいクリスマスを過ごしているのだから。
今日のパーティーは茜が兼ねてから画策していたもの。そして彼女はこの日、リューンに伝えようと考えていたのである。
自分が彼に対して抱いている、想いを。
「あっ……あの……り、リューン」
「にゅ? 茜お姉ちゃんどうしましたにゅ?」
勇気を出して口を開いたものの。
あまりにも無邪気な彼の瞳が自分を映したことに気がついて、茜は出かけた言葉を思わず飲み込んでしまう。
「あ、えっと……その……け、ケーキ、ケーキ切ってあげるね!」
「ありがとうございますにゅ~♪」
頬を赤く染めながらも誤魔化すようにケーキを切る茜。
そんな彼女の心境も知らず、嬉しそうな笑顔を見せるリューン。
そして――再び。
「リューン……あのね……」
「どうかしましたにゅ?」
「す、す……」
「す……?」
きょとんとした表情のリューンは小さく首を傾げ、茜の次の言葉を待っているが。
「す……スキー、ゆ、雪つもってるから一緒にスキーしたいよね!」
「にゅ~♪ 一緒に雪合戦とかかまくら作りたいですにゅ~♪」
……どうしても、あと一歩の勇気が出ない。
なかなか想いを伝えられず、はあっと小さく嘆息する茜。
――その時。
「茜おねーちゃん」
「な……な、な、何!?」
急に声を掛けられ、茜は耳まで真っ赤にさせながら慌てて顔を上げた。
そんな茜に。リューンは満面の笑顔で、こう言ったのだった。
「大好きですにゅ♪ 一緒にパーティー出来てよかったですにゅ♪」
まだ『ラブ』という感情をよく分かっていないリューン。
だが、とても純粋で素直な、そんな彼の言葉。
茜は数度瞬きをしてから、少し照れたようにコクンと頷いて。
そして。
「………茜も、茜も……大好き……」
自分の想いを、言葉にしたのだった。
お互い『大好き』な相手と過ごす、聖夜の楽しいパーティー。
茜はまだほんのり顔を赤く染めながらも。
心から大好きな人と過ごす今を、心から楽しんだのだった。
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