●雪降る聖夜、幻想に彩られた街
二人で迎えた初めてのクリスマス。
まるで地面を覆いつくすようにして、パラパラと雪が降っている。
その中でふたりはイルミネーションに彩られた街並みを観てまわり、広場にライトアップされたクリスマスツリーに気づく。
銀色、金色の光のイルミネーション。
赤、白、緑、黄色、きらきらしたオーナメント。
そのどれもが宝石のように、キラキラの如く輝いていた。
「……綺麗だな」
予想以上に立派なイルミネーションだったため、氷室が思わず言葉を漏らす。
(「ただの木でも、ライトアップするだけでこんなに綺麗になるんですね」)
さすがにムードをぶち壊すと思ったため、東雲が心の中に本音をしまい込む。
「息を吐く美しさってやつですかね?」
氷室と一緒にツリーを眺め、東雲が出来るだけ無難な言葉を選ぶ。
(「……塘果には負けるがな」)
彼女の横顔を眺めつつ、一瞬そんな事を考えたが、流石に我ながらクサ過ぎると思ったため、氷室もあえてその言葉を口にはしなかった。
「……にしても冷え込んでると思いません?」
ぶるりと身体を震わせながら、東雲が真っ白な息を吐く。
雪が降ってせいでもあるのか、まわりの温度が下がってきたらしく、すっかり身体が冷えてしまっている。
そのため、氷室が無言でコートを脱ぎ、そっと彼女の肩に掛けた。
「あ、あの……。そういうつもりじゃ」
申し訳なさそうな表情を浮かべ、東雲が氷室にコートを帰そうとする。
「気にするな。何、この程度の寒さには慣れている」
まったく気にしていない様子で、氷室がさらりと答えを返す。
もちろん、氷室も寒くないというわけではないのだが、彼女が心配しないようにするため、そういった素振りを見せないように心掛けた。
「それじゃ、手でも繋いで帰りませんか? もちろん、嫌だとは言わせませんよ」
満面の笑みを浮かべながら、東雲が軽い感じで問いかける。
「ああ、嫌だと言う訳がないだろ?」
そう答えて氷室が自ら彼女の手を取り、優しく微笑みかけた。
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