●またひとつ、想いを通わせた聖夜
「わ……。やっぱり、夜になると少し寒いですね……」
デートで入った店から出た途端、凍てつくほどの冷気が全身を包み込んだため、つかさがぶるっと身体を震わせる。
昼間はそれなりに暖かかったので、大丈夫だと思っていたのだが、予想外の寒さに襲われたせいで、軽くコートの襟元を合わせた。
「それじゃ、ちょうど良かったかも。これ、貰ってくれる?」
『いまがチャンス』とばかりに袋を漁り、楓が空色の手編みマフラーをプレゼントする。
いつマフラーをプレゼントしようか、タイミングを見計らっていた事もあり、彼女にとっては嬉しい誤算。
もしかすると、サンタクロースが彼女の恋を後押ししてくれたのかも知れない。
「これ……、ボクのために?」
彼女からマフラーを受け取り、つかさが感動した表情を浮かべる。
「じゃ、ボクも……」
その幸せを噛み締めるようにしながら、つかさがお返しに指輪を渡す。
彼女はその指輪を受け取ると、幸せそうに笑顔を浮かべた。
「まだ、ちゃんとした……、そういうための指輪が買えないから、ボクの手製になっちゃうけど……」
申し訳なさそうな表情を浮かべ、つかさがマフラーを首に巻く。
彼女が編んだマフラーはふんわりと羽のように柔らかく、次第に身体が暖まった。
それは、まるで彼女の優しさに包まれていくような感覚……。
「ううん、そんなの全然気にしてないよ。わたしにとっては、宝物だから」
まったく曇りの無い表情を浮かべ、楓が月明かりに照らすようにして、珊瑚の指輪を眺める。
指輪の細工ひとつとっても、つかさの個性が感じられ、その気持ちまでじんわりと伝わってきた。
どちらにしても、この指輪はこの世でひとつしか存在していない。
彼女だけのために作り出された貴重なモノ。
「……良かった。ちょっと、心配だったから」
ホッとした表情を浮かべ、つかさが彼女を見つめて笑顔を浮かべる。
そこでごく自然に唇が重なり合った。
どちらから先に、というわけではなく、それが当たり前であるかのように……。
「帰りましょうか。ボク達の……家に」
そう言って、つかさがはにかむようにして微笑むと、ふたりで寄り添うようにしながら、自分達の結社に帰っていった。
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