●私が、私達がサンタだ♪
「早く、早く、こっち、こっち」
クリスマスパーティの会場にある大きなツリーの前で、紗津希が満面の笑みを浮かべて凪乃を手招きをする。
ふたりともサンタガールの格好に扮しており、クリスマスの記念に写真を撮ろうという事になった。
夜空からは粉雪が降っており、聖なる夜に相応しい雰囲気が整っている。
この瞬間を写真に収めておけば、ふたりにとっても、必ず良い思い出になるはずだ。
「そこまで急がなくても、いいんじゃないか」
身体に降りかかった粉雪を振り払い、凪乃が彼女を見つめてクスリと笑う。
ふたりの関係は今まで一緒に戦ってきたパートナー。
もちろん、学生生活でも大の親友同士。
紗津希にとって、凪乃の存在が大きな心の支えになっている。
「そんなに暢気な事を言っていたら、クリスマスが終わっちゃうよ。ほらほら、笑って、笑って!」
カメラのある方向を指差し、紗津希が凪乃と仲良く肩を組む。
そのため、凪乃も彼女の勢いにつられてカメラを見つめ、自然と笑顔を浮かべていく。
そのタイミングに合わせて自動でシャッターが切られ、ふたりの大切な思い出が一枚の写真となった。
「……紗津希には夢があるの」
何気なく空を眺めながら、紗津希がゆっくりと口を開く。
「……夢?」
彼女の言葉が気になったため、凪乃が確認するようにして問いかける。
「うん、人に幸せを運ぶでっかいサンタみたいな落語家になるって事」
満面の笑みを浮かべながら、紗津希が自分の夢を語り出す。
落語家になるためには、いくつか手順が必要になるが、どんな困難があったとしても、絶対になれるという自信があった。
「なれるといいな。頑張れよ」
苦笑いを浮かべながら、凪乃が彼女に対してエールを送る。
いまは単なる夢でしかないが、彼女なら必ず夢を現実にする事が出来そうだ。
「うん、任せてよ。絶対になってみせるから」
自信に満ちた表情を浮かべ、紗津希が拳をギュッと握り締める。
その視線の先には、希望に満ちた未来が映っていた。
| |