緋神・琉紫葵 & 蓬莱院・慧奈

●聖夜に浮かぶ双子の銀月

「さあ、クリスマスプレゼントを探しに行くですよー」
 夕暮れに待ち合わせ、慧奈が第一声を響かせる。
「……えっ? 今から?」
『それなら、もう少し早く言ってくれれば良かったのに』と思ったが、琉紫葵も他に用事があるというわけではないので、一緒についていく事にした。
 どうやら慧奈は自分が身につけているネックレスと同じものを琉紫葵に送りたいようである。
「それって慧奈さんの親友が誕生日にくれたものでしょ? それなら売っている場所を聞いた方が早いんじゃないですか?」
 不思議そうに首を傾げ、琉紫葵が素朴な疑問を口にした。
「目的のものを見つけるまでが楽しいデートなのですよー」
 ごく在り来たりな琉紫葵の言葉に、胸を張って言い返す慧奈。
 雰囲気的には『家に帰るまでが遠足』と同じ……かも知れない。
(「……そういえば、最近すれ違ってばかりで、デートというのも久しぶりだったな。こんな機会も滅多に無いから、とことん付き合ってやるか」)
 そんな事を考えながら、琉紫葵が彼女の後をついていく。
 それから数時間後……。
 立ち寄ったアクセサリーショップは、既に5軒目。
 探しているネックレスは、なかなか見つからない。
 テーブルの上には山のようにネックレスが積まれており、慧奈がその上に見立てから外れたネックレスをぽいぽいと投げ込んでいく。
 どれも似たような感じがするのだが、細部が微妙に異なっていたり、質感がまったく違っていたりしたため、慧奈もまったく納得していない様子。
 そうしているうちに、最後に寄ったアクセサリーショップの閉店時間。
 『さすがに今日は無理かな』と、諦めるようとした、その時……。
「あった。とうとう見つけたですよ」
 店内に慧奈の明るい声が響く。
 その手には三日月のネックレスが握られており、慧奈が満面の笑みを浮かべて支払いを済ませる。
「これでお揃い♪」
 ホッとした表情を浮かべ、慧奈が琉紫葵の首にネックレスをかけた。
「ありがとう。俺のために探してくれて」
 彼女に対して感謝の言葉を述べつつ、琉紫葵が優しく肩を抱くようにして店を出る。
 その途端、銀の三日月(ネックレス)がクリスマスのイルミネーションを反射させ、寄り添うようにして淡い輝きを放つのだった。




イラストレーター名:カリハ