●ホワイトクリスマス
楽しかったクリスマスも、もうすぐ終わる。
今は、クリスマスパーティーの帰り道。
エレナと白都は暗がりの道を歩いていく。夜道だというのに、明るいと思うのは、煌くイルミネーションのせい? それとも……。
もう少し一緒にいたい。だが、それは叶わぬ願い。
ふと、隣を見た。瞳に映るは、彼女の沈んだ顔。
(「……眼鏡、取ったのが悪かったのか?」)
彼女の浮かない顔の原因を思い浮かべる。
(「デートコースが嫌だったとか、俺が何かしたとか。からかったりするから、嫌なんだろうな……。慌てる時って滅茶苦茶可愛いから、ついからかうんだよな」)
思わず心の中で唸ってしまった。
一方、浮かない顔の彼女、ことエレナはというと。
(「パーティーに一緒に行こうと誘われて、嬉しかったけど……」)
終わりが近づいてきたこと。それがエレナを憂鬱にさせていた。
(「先輩はもう少しで卒業で……これが一緒に過ごせる最後のクリスマスかも……」)
そう思うと、よけいに寂しく感じて。だから。
(「もう少し一緒にいたいな」)
口には出せない言葉を心の中でつぶやいて。
ひらひら。
ひらひらひら……。
エレナの前に白いものが舞い降りた。雪だ。
思わずエレナは顔を上げた。一つや二つだけではない。たくさんの雪がふわふわと落ちてくる。
「あ、雪だ」
隣にいた白都が呟いた。
「ホワイトクリスマスだな。道理で寒い」
白い雪の一つを手に取るエレナに、白都は。
「寒いだろう、入れよ」
後ろからそっと、自分のコートで包み込む。
「せん、ぱい……」
手の中にあったはずの冷たさは、あっという間に消えていき。感じるのは白都のくれた、暖かいぬくもり。寒いはずの外にいるのに、こんなにも暖かく感じる。
エレナは振り向き、笑顔を浮かべた。
「ありがとう、先輩」
白都は思う。
俺の想いで潰れないように、優しく触れていようと。
そして、エレナも。
今はこの幸せな時間を楽しもうと思っていた。
もう少し楽しんでと、クリスマスの神様が後押ししてくれたかのような、この時間を。
| |