木村・小夜 & 鹿取・隼人

●ずっと、いっしょに、いてください

 去年のクリスマスも、一昨年のクリスマスも、先輩後輩の関係で、クリスマスパーティに参加した。
 しかし、今年は今までとは、状況が異なっている。
 初めて恋人同士として過ごすクリスマス。
 その分、今までのクリスマスと比べて、何か特別な日であるかのような錯覚を受ける。
「ちょっと、寒い、ですね」
 真っ白な息を吐きながら、小夜が寒そうに身体を震わせた。
 緊張しているせいもあるのか、いつもよりも寒く感じる。
「……そうか。だったら俺のコートも羽織っておくか」
 何気なく視線を送りながら、隼人がゆっくりとコートを脱ぐ。
 特に寒いと言うわけでもないので、少しの間だけならコートを着ていなくても、それほど苦にはならなかった。
「そ、そ、そんな事を、したら、風邪を、ひいて、しまい、ますよ」
 心配した表情を浮かべ、小夜が顔を真っ赤にする。
 彼女もそういうつもりで言ったわけではないので、このままコートを借りるわけにも行かなかった。
「いや、俺の事は気にするな」
 ゆっくりと首を振り、隼人が答えを返す。
 ここで隼人も引き下がれない。
「き、気にします」
 彼女にとっても、隼人は大事。
 そのため、これが原因で隼人に風邪を引かれたら、彼女だって困ってしまう。
 そこで本来の目的を思い出し、気持ちを落ち着かせるため、深呼吸……。
「え、えっと、伝えたいこと、いっぱい、ありますけれど。その、一番、大事な、お願い、です。……ずっと、いっしょに、いてください……」
 隼人を見つめて笑顔を浮かべ、小夜がメッセージカードを渡す。
 銀糸の刺繍で雪の結晶を描いた布張りのメッセージカードには、彼女の文字で『ずっといっしょにいてください』と書かれていた。
 小夜がそっと目を閉じる。
 緊張で小刻みに身体を震わせて……。
「ああ、もちろん。 能力者として、小夜の為に生きて戻る事……、彼女との約束を守る事が、苦境を越える為の力になると信じているから……」
 そう言って隼人が優しくキスをした。




イラストレーター名:カザミネマユキ