●アートリンク in 横浜赤レンガ倉庫
クリスマス当日。達磨とタヱは朝から出かけて、クリスマスムード一色の街を思う存分味わっていた。
ショッピングを楽しんだ後は、お腹いっぱい中華のランチ。
その後は、赤いレンガ壁の見えるスケート場へと、2人はくり出した。
達磨はスケートはお手の物。コーチした経験もある程だ。しかし、タヱにはコーチの必要は無いようだった。
「わ! 広い! 早く行きましょう!」
銀盤に降りたタヱは、スイスイと滑って達磨を手招く。
スノーボードも上手な彼女、道具が変わっても滑ることは得意なようだ。
タヱを追い、達磨も氷上にスケート靴のエッジを滑らせた。
身体を動かしていれば、冷たい北風も頬に気持ちが良い。それに、心地よいスピードで、赤いレンガ壁の美しい建物を望む風景が流れて行くのが目に楽しかった。
何よりも、仲の良い2人一緒に遊びに来ているのだ。
ただ同じコート内を回るだけだけれど、達磨とタヱはご満悦だった。
楽しい時間が過ぎるのは早く、気がつけば随分と日が傾いている。すっかり夕暮れ時だ。
空が夕闇に染まり、太陽の光の代わりにスケートリンクに降り注いだのは、彩り豊かな光。
「タヱ。こっち」
滑るのに夢中でそれに全く気付いていないタヱの手を引き、達磨は彼女をリンクの外へと導く。
向かった先には、赤レンガの壁。
ライトアップされた壁に、幻想的な光の絵画が現れていた。
それに、青を基調にした、大きなツリーのイルミネーション。
「コレをタヱに見せたかったんだ」
赤レンガの壁を指差し、達磨は笑った。
「わあ……すっごい!」
タヱは瞳を輝かせ、ぴょんぴょん跳ね回っている。
「すっごいきれい!」
降るような光を受け止めるように、タヱは掌を広げる。あんまり飾らないというか、表現力を疑われそうな、簡単で、それでいて大げさな感じの台詞は、タヱらしい率直なもので。
「喜んでもらえて、よかった」
達磨も一緒に、ますます笑顔になる。
出会って丁度1周年のクリスマス。今宵のこの光景を、2人で共通の思い出として残したかった。
さっきまで滑っていたスケートリンクのほうを振り向けば、キラキラと輝く光を氷が吸い込んで、まるで宝石をばら撒いたかのようだ。
「また来年も一緒に来ような」
達磨の言葉に、タヱは周囲の光景に負けないくらいキラキラと輝く笑顔で振り返った。
返事は、聞く前からわかる。そんな笑顔だった。
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