●祈りをこめて
ほのかな明かりが部屋を包む。
キャンドルの生み出す、その炎は淡い光になって、二人の顔を照らしていた。
ゆらゆらとキャンドルの炎が揺れる。
「去年も、うぬと一緒に良いクリスマスを送れた」
海音は、静かに口を開いた。
そのときの様子を思い出しているかのように、瞳を閉じて。
「今年もまた同じように、クリスマスを過ごせて嬉しい」
それは海音の本心でもあった。
少し照れもあるのか、海音は話を変える。
「余が師匠殿に拾われたのがこの日だから、余の誕生日もクリスマスなわけだが」
昔を懐かしむかのように、海音は揺れるキャンドルを眺めている。
「師匠殿は余と過ごせないのを悔やんでおった。そのときの顔を心太郎にもみせたかったのだ」
くすくすと笑いながら、海音はそう伝えた。
「ははは、そんな悔しがってたのか。そいつは見てみたかったな」
それを聞いていた心太郎は、一緒に笑い出した。
「ま、こうして海音を独り占め出来るってだけでも、俺は満足だがな♪」
「っ?!」
突然、後ろから心太郎に抱きしめられて、海音は息が止まりそうになる。
「も、もう少しムードというのを、大事にするがいいぞ! バカもん!」
「ははは、悪い悪い」
とはいっても悪いとは思っていない様子で。
「でもま、こうして一緒にいれるだけで、俺は凄く幸せだぞ♪」
その心太郎の言葉に、海音は照れたように僅かに微笑む。
どうやら、今年のクリスマスも幸せなひと時を過ごせそうだ。
外ではゆっくりと雪が舞い落ち、ホワイトクリスマスを告げて。
部屋の中では、キャンドルの灯りのみが、二人を照らしている。
ほのかな明かり。
ほのかな暖かさ。
二人のその後を知るのは、ゆらゆらと揺れるキャンドルのみ。
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