出雲崎・夏野 & 橘花・リッタ

●Happy birthday & Merry Xmas!

 今日はクリスマス。
 だけど、夏野にはもう一つ、特別な意味があった。
 そう、今日は夏野の誕生日でもある。
 真夜中の雪の中。
 イルミネーションやクリスマスの飾りに彩られたツリーの前で、二人は向き合う。

 とりあえず。
 誕生日プレゼントを渡すために呼び出したリッタ。……いや、正確には夏野についてきたというのが正しい。リッタは少し寒さに震えながらも、用意したものを取り出した。
 ここまで来たからには、目的を果たさなくてはならないだろう。
「んっ」
「え?」
 ぐいっとリッタな夏野の目の前に、プレゼントを差し出した。
「これって……」
「誕生日、プレゼントっ」
 押し付けるかのように、夏野の手に握らせる。と、目的を果たしたところで、リッタはそっぽを向く。
 そっぽを向いたリッタは、恥ずかしそうに頬を火照らせていた。

 可愛い。
 すごく可愛い。
 激しく可愛い……。
 普段、夏野は、リッタに蹴られたり、殴られたり、踏んづけられたりしているけれども。
 今日はちょっとだけ素直で、言葉にするのがもったいないくらい、リッタが可愛く感じる。
(「あと数ヶ月で、学園から卒業してしまうリッタちゃんと、来年もその次も、ずっと一緒にこの日を迎えられたなら……」)
 綺麗なツリーの前で、そう夏野は願い。
(「今キスしたら、多分、もっと可愛い」)
 夏野は心の赴くままに、それを実行した。

「ありがとう、リッタちゃん」
 声をかけられ、リッタは思わず振り向く。
 照れながら何かを言おうとするリッタの前に、それは訪れた。
 重なる唇。
 でも、それは一瞬。
 ばちこーんと、リッタの鉄拳が夏野の顔にジャストミートした。

 ぽかぽかぽか。
 恥ずかしそうに夏野をたたくリッタ。
「いたたた。でも、今日は可愛いね」
「………」
 無言でぽかぽか、まだ叩いている。
 けれど、気のせいだろうか? いつもよりもその力は優しく感じる。
「寒いからコート貸して、今すぐ脱げ」
 恥ずかしさが頂点に達したらしい。顔を赤くさせたまま、リッタは無理やり夏野のコートを奪い取ろうとした。が、しかし。
「一緒にあったまればいいよ、ホラ」
「!!」
 逆に、夏野のコートの中に抱き込まれてしまった。
「バカっ!!」

 綺麗なツリーの前でもらったプレゼント。
 その中には、赤い薔薇のピアスが入っていた。
 きっと、そのピアスを見るたびに思い出すだろう。
 ちょっぴり痛い想い出と、甘い一瞬の想い出とを……。




イラストレーター名:吉江ユタカ