●不意打ち
「よしっ! これでどこからどうみてもサンタだな」
満足げな表情を浮かべ、他界が手鏡で自分の姿を確認した。
彼女を驚かせるために気合を入れて、サンタクロースの格好に扮している事もあり、自分でも惚れ惚れするほどの出来である。
「へっへー。急にドアを開けて現れるサンタに、きっとひにゃーいもびっくりなんだぜ」
含みのある笑みを浮かべ、他界が妄想を膨らます。
彼の予想ではサンタクロースの格好をして、どっかんと現れてプレゼントを渡した途端、雛愛が飛び上がるほどの勢いで驚くはずなので、何もしないうちから笑いを堪えるのに必死であった。
もしかすると、既に眠りについているかも知れないが、それならば『メリークリスマス!』と叫び、最初の予定とは違った方向性から彼女を驚かせる事が出来る。
どちらにしても、他愛の目的を果たす事が出来るので、まったく問題ない。
つまり、この作戦が失敗する可能性は……ゼロ。
他界は鼻歌混じりにドアの前に立ち、大きく深呼吸……。
「HAHAッ! メリークリスマス!!」
他界の声が室内に響く。
「メリークリスマス〜♪」
間髪いれず、雛愛が可愛らしい包みに入った、プレゼントを渡す。
「……って、どうしてひにゃーいが玄関にいるうううう!!!!」
唖然とした表情を浮かべ、他界は信じられない様子でツッコミを入れる。
この結果は、まったくの予想外。
何とか気持ちを落ち着かせるため、雛愛から貰ったプレゼントを開けた。
その中に入っていたのは、彼女が予め買っておいた万華鏡と、青い石のネックレス。
「聞こえていましたよ、そらえ先輩の声……」
苦笑いを浮かべながら、雛愛が答えを返す。
その答えに他界が再びショックを受ける。
「ま、まさか、俺の声が聞こえていたなんて……。ははっ、メリークリスマス、ひにゃーい」
例えようのない敗北感に襲われながら、他界が乾いた笑いを響かせ、袋の中に入っていたプレゼントを渡す。
「メリークリスマス〜♪」
そう言って雛愛が他界からプレゼントを受け取り、天使のような笑みを浮かべるのであった。
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