夜桜・雅 & 貴家・ノイエ

●2人だけのダンスタイム

 今日はノイエと恋人になってから、初めてのデート。
 朝から胸のドキドキが止まらない。
 それはダンスホールに着いてからも、まったく同じであった。
 心を落ち着かせるため、深呼吸……。
 緊張した気持ちを落ち着かせ、白いカクテルドレスに着替えて、恋人であるノイエの姿を探す。
 ノイエは着慣れていないドレスの裾を踏まないようにしながら、同じように雅の事を探していた。
「綺麗ですよ、ノイエさん」
 胸元が開いた黒いロングドレスに思わず赤面しつつ、雅が優しくノイエに微笑みかける。
「雅さんこそ」
 彼に会えた事で余計に心が弾み、ノイエが恥ずかしそうに頬を染めた。
 雅の格好は男性としては一風変わったドレス着だが、ノイエはそれを含めて彼をパートナーとして選んだ。
「一曲踊ろうよ、ノイエさん♪」
 ダンスホールでワルツが流れ出したため、雅がそっとノイエの手を取った。
「もちろん、喜んで♪」
 その気持ちに応えるようにして雅の手を掴み、ノイエが彼に身体を預けるようにしてダンスを踊る。
 雅も彼女のペースに合わせつつ、優しくリードしていった。
 今まで以上に相手が身近にいるような感覚。
 それは実際の距離ではなく、心の距離。
 ……通じ合う心と心。
「ノイエさん、上手だよ」
 そう言って雅が優しく微笑む。
「ありがとう」
 ノイエも幸せそうに笑顔を浮かべる。
 あっという間に過ぎ行く時間……。
 愛する人と一緒にいるせいか、いつもより早く時間が流れているような錯覚に陥った。
「今日はお陰さまで楽しかったデス♪」
 ダンスが終わり、ノイエが雅にお礼を言う。
 雅がリードしてくれたおかげで、とても楽しくダンスを踊る事が出来た。
 きっと、これも彼をパートナーとして選んだおかげ。
「来年も一緒にクリスマスを過ごせたらいいね。愛してるよ!」
 そう言って雅がノイエを優しく抱きしめた。




イラストレーター名:秋月えいる