●Illuminations of a blessings.
夕日を浴びて黄金色に輝くクリスマスツリー。
学園の中庭は木々もオーナメントで飾られ、クリスマス一色になっている。
木々に飾られたライトが眩く光り、ふたりの姿を照らしていた。
ふたりが付き合い始めたのは、11月の初め……。
10月に漣花と出会って一目惚れした将が、11月に入って彼女に告白したのである。
それからふたりの交際が始まったが、彼女を抱きしめた事があっても、ファーストキスには、まだ至っていない。
それだけ彼女を大事にしたいと言う気持ちが強いので、なかなかタイミングを掴む事が出来なかった。
「これ、なんでしょうね?」
歩いている途中で何かが当たり、漣花が不思議そうに首を傾げて拾い上げる。
それはヤドリギの飾り……。
他とは違う質素な飾りに、彼女の疑問が深まっていく。
「……まさか」
ハッとした表情を浮かべ、将がヤドリギの伝説を思い出す。
……単なる偶然かも知れない。
だが、偶然の一言で片付けるには、あまりにも出来すぎた話であった。
「一体、何なんですか、これ?」
そのため、漣花が興味津々な様子で、じーっと将の顔を見る。
「いや、これはだな……」
とうとう彼女の視線に負け、将がしどろもどろに説明をした。
夕闇で顔の紅潮が分かりづらい事が唯一の救い……。
こんな真っ赤になった顔を、彼女にはあまり見せたくない。
将からヤドリギの伝説について話を聞き、漣花の顔が移り変わる世界の中でも解るくらい真っ赤になった。
漣花もまさかそんな話だったとは予想をしていなかったらしく、顔を赤らめて胸をドキドキとさせている。
「キスしても良いか、って聞いて良いか?」
真剣な表情を浮かべ、将が漣花の肩に手を置いた。
それだけで漣花の心臓が激しく高鳴り、まったく身動きが取れなくなった。
それでも、何とか返事をしようとして、無駄にあわあわとした後、ほんの少し頷く漣花。
「好きだ。凄く。……きっと、ずっと」
そっと漣花を抱き寄せ、将が優しく囁きかけた。
漣花は……上手く言葉にする事が出来ず、また小さく頷いて、将を見上げた。
その答えに緊張が解れて微笑む将。
そして、将は彼女の顔を見つめた後、ゆっくりとキスをするのであった。
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