●Courage at Christmas
銀色のイルミネーションが輝く夜の街を、並んで歩く未来とユラ。
「きれーだねー!」
まわりの景色に目を向けては、やけにハイテンションにはしゃいでみせるユラは、実はとっても緊張気味。
何故って、今日は、初めて出来た大切な人と、初めて過ごすクリスマスだから。
嬉しさと緊張感で一杯になった頭の中から、浮かぶ想いは彼のことばかり。
一方未来は、傍から見ればとても堂々と歩いていた。
けれど内心は、ぴんと張り詰めた緊張の糸との戦いで、今にも心臓が爆発してしまいそうな状況。
そしてお互い、相手にそれを悟られないようにとするあまり、何だかギクシャクとぎこちない。
何もかもが初めてで、どうすればいいのか分からない。
他愛のない会話さえもが、特別な気がして仕方ない。
「あっ」
「わっ」
ゆらゆら揺れていた互いの手が、ふとしたはずみに、ほんの少しだけ触れ合った。
慌てて触れた手を離し、真っ赤な顔で手を握りしめるユラ。
未来はあくまで平静を装い、まるで何事もなかったかのように歩いているが、その声はどこかちょっと上擦り気味で、心音は厚いコートの上からでも聞こえてきそう。
どうしよう……。
とっても恥ずかしいけれど、折角のクリスマスの夜だから……いいよね!
ユラは勇気を振り絞り、熱を帯びた震える右手を、未来のコートの袖口へと伸ばした。
「……え、えーと……手、繋ぎたいなー、なーんて……」
途切れ途切れに言いながら、袖の端をぎゅっと掴めば、指先に触れる彼の手の甲。
ほんの僅かに触れただけでも、身体中が熱くなってくる。
けれどそれは、触れられている未来も同じ。
「あぁ、いいよ」
そう言って、笑顔で左手を動かすが、それだけでもう精一杯。
どくん、どくん。
手のひら越しに伝わってくる、互いの体温、心音、そして想い……。
銀色のイルミネーションが輝く夜の街を、手を繋いで歩く未来とユラ。
「きれーだね……」
けれどまわりの景色なんて、本当は今は見えてない。
ただ、隣に大切な人がいる……今は、それだけがすべて。
高鳴る鼓動は、まだまだ治まる気配はない。
寧ろ、どんどん大きくなってゆく。
(「……今日一日、俺の心臓もつかな……」)
平静を装うのは、もうそろそろ限界かもしれない。
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