●メリークリスマス
「つまり……、ここは、こうで、こうなるわけだ……」
周は自室でレイに英語の勉強を教えていた。
レイの成績は全体的に割りと上位の方なのだが、英語の筆記だけはなかなか良い成績が取れない。
そこで周に家庭教師になり、英語を教える事になったらしい。
周が用意したテキストには、簡単な問題から、引っ掛け問題まで、様々なパターンが載っている。
「それじゃ、ここはこうなるわけだね」
納得した表情を浮かべ、レイが解答欄に答えを書く。
問題自体はそれほど難しくなかったが、言葉の言い回しが少し引っかかった。
つまり普通に答えただけでは、不正解。
その事を理解した上で、レイは解答欄に答えを書き記す。
「ああ……、それで間違いない」
レイの書いた答えを確認し、周が小さくコクンと頷いた。
最初はひとつの問題を解くにも、かなりの時間が掛かっていたが、コツを掴んだ途端に、次々と問題を解いていった。
それだけ周の教え方が良かったのかも知れないが、まだまだ完璧と言えるレベルには達していない。
完全に英語をマスターするまでには、もう少し時間が必要そうだ。
「……そろそろ休むか。むりやり頭に詰め込んでも、意味が無い」
ゆっくりと時間を確認しながら、周が食事の用意をし始める。
結社でも料理を作っていた事もあり、周の腕前はかなり上手いレベル。
机の上には、手作りの料理や、お菓子、クリスマスケーキなどが並んでいく。
「わっ、こんなにいっぱい食べていいの?」
机の上に置かれた料理を眺め、レイが瞳をランランと輝かせる。
どの料理も美味しそうなので、どれから手をつけて良いのか、迷ってしまう。
「遠慮せず、好きなものから食べるといい」
クールな表情を浮かべ、周がさらりと答えを返す。
まだ、何枚かテキストが残っているので、終わるまでにはもう少し時間が掛かりそうである。
そのためにも、少しでも食べ物を胃袋の中に詰め込んでおかねば、途中で空腹になって倒れてしまうかもしれない。
「あっ、そうだ!」
ケーキを食べようとした途端、レイがピタリと動きを止める。
「今年もよろしくね」
そう言ってレイがニコリと微笑んだ。
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