天津・蒼馬 & 印南・ハル

●いつかのメリークリスマス〜僕の世界を灯すのは君〜

 ……ポツポツと降りしきる雪の中。
 待ち合わせの時間に遅れた蒼馬が、イルミネーションの綺麗な街角を駆け抜けていく。
(「ひょっとしたら……、怒っているかもしれない」)
(「もしかしたら、帰っているのかも……」)
 そんな不安が脳裏に次々と過ぎったが、いまさら立ち止まるわけには行かなかった。
 わずかな可能性にすべてを賭け、全力で待ち合わせ場所になっている、大きなクリスマスツリーにむかう。
 ……そこにハルはいた。
 ハルは蒼馬の姿に気づくと、嬉しそうに合図を送る。
「遅れてごめん、寒かったろう?」
 激しく息を切らせながら、蒼馬が申し訳なさそうな表情を浮かべて口を開く。
「待っているのも楽しかったわ。それに街には歌が溢れていたし」
 街中から聞こえる音楽に耳を傾け、ハルが暖かい笑顔で迎えてくれた。
 蒼馬にとって、いつも優しい年下の恋人は、世界を灯す天使のような存在。
 それだけ大切な存在であるからこそ、余計に愛しいと思う気持ちが強くなっていく。
「すっかり身体が冷えいてしまっているじゃないか。でも、こうすれば暖かいよ」
 冷たくなったハルの身体を抱き寄せ、蒼馬が自分のマフラーを彼女の首に巻く。
「本当……、暖かい……」
 マフラーのぬくもりと共に、蒼馬の優しさを感じ、ハルが幸せそうな表情浮かべる。
 蒼馬の優しさにほんの少し触れるだけで、先ほどまで身体を包んでた冷気が、何処かに行ってしまったかのような錯覚を受けた。
 彼女にとっても、蒼馬は大切な存在……。
「俺は来年、高校を卒業して学校で会う機会は減ってしまうかもしれないから……、想い出をいっぱい作ろうね!」
 まっすぐハルを見つめ、蒼馬が彼女と約束をかわす。
 そして、ふたりは教会にむかい、一緒に賛美歌を歌う。
 いまのふたりを象徴するような、喜びの歌を……。




イラストレーター名:零壱