姫琴・睦美 & アクアリース・シフォン

●いっしょのコートで

 今年もアクアリースの要望により、落ち着いた感じのクリスマスを過ごす。
 睦美とアクアリースは一緒に、イルミネーションで彩られたクリスマスツリーを見に行ったり、教会のミサに参加したりした。
 その最後にアクアリースの希望で、静かな公園へとやってきた。

 人気があまりない。
 あたりを見渡しても人の気配は感じられない。
(「人気が全くありませんわね……。うん、危険ですわ」)
「主にアクアちゃんが。私の手によって」
 そこまで考えた睦美がちらりとアクアリースを見た。
「っていうか誘ってます?」
「……誘ってませんよ?」
 心の中の呟きの言葉を瞬時に察したのか、にこりと言葉を返すアクアリースに、驚きの表情を隠せない睦美。
「エスパー?」
「……途中から口に出てましたよ」
「おうてりぶる!」
「……いいですけど」
 心の中だけでは押さえられず、口にだしてしまっていたと言う事実に、さらにびっくりの睦美だけれども、さらりと返ってきたアクアリースの言葉に更にびっくりする。
「いいの!?」
「……あんまりエッチなのは駄目ですよ?」
「大丈夫、アクアちゃんがするなというなら、エロい事なんて考えませんわ、天地開闢に賭けて!」
 微塵が美人だったり、天地神明が天地開闢だったり、言い間違いするぐらいに、睦美の鼓動は高鳴った。
「くしゅん」
 どうしようかと思った、その瞬間アクアリースの可愛らしいくしゃみが聞こえてきた。
 睦美は柔らかい笑みで自分のコートの中にアクアリースをいれて、背中から抱きしめる。
「暖まりました?」
「……はい」
「来年も一緒にクリスマス過ごせるといいですわね」
「……はい」
「……私のこと愛してます?」
「……どうでしょう?」
「ここは『はい』じゃないんですのね」
 アクアリースからの言葉にしゅんとしてしまう睦美。そんな睦美にアクアリースはくるりと振り返り、軽く口づけて微笑む。
「……睦美さんのこと、好きですよ」
 そんなアクアリースがたまらなく可愛い、睦美であった。




イラストレーター名:架神玲那