鈴音・琴奈 & 霧生・氷華

●Happy Birthday*Merry Christmas

 リビングを彩るクリスマスリース。
 テーブルの上では、サンタのチョコとリースが飾られた、チョコレートのホールケーキ。
 キャンドルに灯された火は、静かにユラユラと揺れている。

 今夜はクリスマスイブ。
 けれど、もうひとつ大切なことがある。

 大好きな「お母さん」からの招待に、小雪舞う中ドキドキしながら琴奈……お母さんの家を訪ねた氷華。
 そこで彼を待っていたのは、優しいお母さんと、とても素敵に飾られた部屋。
 琴奈に案内されるまま、特等席に腰掛けると、その耳元に彼女の声が聞こえてきた。
「メリークリスマス♪ お誕生日おめでとう」
「……!」
 驚いて振り返れば、そこにあるのは穏やかな微笑み。
 氷華は椅子から立ち上がり、琴奈にぎゅっと抱きついた。
 朱に染まる顔、目元に浮かぶ大粒の涙。
 それは悲しいからではなく、とてもとても嬉しいから。
 突然のことに、琴奈は少し驚いた。けれどすぐに穏やかな笑みを取り戻し、氷華の頭を何度も何度もやさしく撫でた。

 雪はしんしんと降り続き、外はすっかり銀世界。
「メリークリスマス♪」
「メリークリスマスです」
「そして、ハッピーバースデー♪」
「はわ、あ……ありがとうございます……」
 ほんのちょっと照れながら、もう一度お祝いの言葉を交わし。
「それじゃあ氷華ちゃん、そろそろケーキ食べましょうか?」
「はいです!」
 向かい合って椅子に座り、紅茶をカップに注ぎ入れる。
「ケーキ、どれくらい切りましょう?」
「んと……沢山食べたいです」
 その言葉に、琴奈は微笑み頷くと、飾りが付いた大切りのケーキを、氷華の皿の上に乗せた。

 ゆっくりと流れてゆく、2人だけの時間。
 あたたかくて、楽しい時間。
「氷華ちゃん、おかわりは?」
「はいです♪」
 新しい紅茶に、新しいケーキ。

 今日は素敵なクリスマスイブ。
 そして……とても素敵な誕生日………。




イラストレーター名:架神玲那