山田・龍之介 & 檜山・春歌

●いつものメリークリスマス

「今日は楽しかった。ありがとな」
 クリスマスのデートを満喫した後、夜景の綺麗な海沿いに車を止め、龍之介は春歌に話しかけていた。
 そのため、春歌も満面の笑みを浮かべ、『私も楽しかったよ、いつもありがとね』と答えを返す。
「てか、もう3度目のクリスマスか。早いなぁ……」
 しみじみとした表情を浮かべながら、龍之介がいままでの出来事を思い出していく。
「そういや春歌ももうすぐ卒業だな。進路とか決めた?」
 依頼に参加している時や学校に通っている時は、それほど気にならなかったのだが、慣れ親しんだ銀誓館学園から離れる事になると思うと、何だか寂しい気持ちになってくる。
「進路? 決まってるよー。先輩のお嫁さんー」
 えっへんと胸を張りながら、春歌がキッパリと言い放つ。
「……ん? そうか。それなら心配ないな」
 その一言を聞いて龍之介は一瞬、驚いた表情を浮かべ、真っ赤になった顔を誤魔化すようにしてさらりと流す。
「……って、ちょっと! ここはツッコむトコロですよ! 『幼稚園児かっ』くらい言ってクダサイ。恥ずかしいっ」
 恥ずかしそうに頬を染めながら、春歌がビシィッとツッコミを入れる。
「こっちだって、前振りなしでそんな事を言われたら困るだろうがっ! それで本当はどうなんだ?」
 さらに顔を真っ赤にして、龍之介がボソリと呟いた。
「えーっと、専門学校に行くよ。美容師になりたいから」
 そこで春歌が素直に答える。
(「いや、『さっきの言葉が本気か?』って意味で聞いたんだが……。まぁ、いいか」)
 苦笑いを浮かべながら、龍之介が窓越しに夜空を見上げた。
「ずいぶん冷え込んでると思ったら、雪か」
 空からポツポツと降り始めた雪を眺め、龍之介が暖房のスイッチを入れる。
 春歌も温もりを求めるようにして、さりげなく龍之介の傍に寄っていく。
「……春歌」
 その事に気づいて彼女の名前を呼びながら、龍之介が優しく肩を抱き寄せてキスをする。
「そうだ、これ。改めてメリークリスマス。これからもよろしくな」
 春歌にプレゼントを手渡し、龍之介が照れくさそうに笑う。
「はい、私からも。メリークリスマス! こちらこそよろしくね」
 もう一度ギュッと抱きしめ、春歌もプレゼントを渡す。
 龍之介はそのプレゼントを受け取り、顔を真っ赤にしながら、『あ、ありがとな』とお礼を言う。
「あっ! 先輩、照れてる?」
 春歌はそんな龍之介があまりにも可愛らしく思えたため、軽くほっぺたを引っ張った。




イラストレーター名:緋烏