●幸せの約束
「あ!」
繋いでいた手が温かかったのだけれども、歌戀は直矢と繋いでいた手を解き、何か見つけた方へと走り出す。
見つけたのは宿り木。
そして今日はクリスマス。
だから歌戀はくるりと直矢の方に向き直る。
「直矢さん!」
それに直矢は何というように、小さく首を傾げた。
「知っていますか? クリスマスに宿り木の下にいる女の子にはキスをしていいんですわよ。急がないと他の人に私の唇を奪われるかも知れませんわよ? それでもよろしくって?」
「……そっか」
顔を真っ赤にした歌戀の顔を見て、事の次第が分った直矢は小さく頷いた。
女の子の必死の主張がとても嬉しいけど、けれども少し照れてしまうから、照れた分だけキザな感じを装った。
「それじゃ……お姫様が他の奴らに奪われる前に」
口元に微笑みを携えながら、宿り木の下で待っている歌戀の下へと、ゆっくりと歩いていく。
「……俺が攫っていかないとな?」
歌戀の下にたどり着いた直矢は、口元の笑みを携えたまま彼女の顎をくいっと持ち上げる。
そのままゆっくりと重ねる唇。
それは一瞬にして永遠。
静かに重ねた唇を離す。
ほんの少し名残惜しい。
「えへへ、言い伝えはまだあるんです。宿り木の下でキスした二人は、
ずっと幸せになれるんですよ」
さっきよりももっと頬を赤くした歌戀が、彼の方へと両腕を伸ばすとそのまま抱きしめる。
頬の赤いのを隠すのと、この幸福感を逃したくないから。
ぎゅっと抱きつけば、彼の体温がすぐそこで感じられる。
「あはは。……じゃ、俺達は絶対に幸せになれるな」
今度は直矢が歌戀の小さな体を抱きしめ返す。
すると直矢の胸に顔を埋めていた歌戀が顔を上げて、直矢に微笑みかけると、直矢も微笑み返す。
「……カレーン。ずっと………一緒だ」
小さく囁く声は彼女の耳元で。
だれもいないけれども、誰にも聞かれたくない約束だから。
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