星宮・雪銀 & シニスティア・ヴリコラケゥス

●月が照らす二人の聖夜

 クリスマスの夜、雪銀とシニスティアは部屋で2人だけのパーティを過ごしていた。
 テーブルの上には、チキンやケーキ、オードブルなどの皿が並ぶ。どれも、雪銀が作った物だ。2人は用意したグラスで乾杯すると、それらの料理を味わいながら、ゆったりと流れていく時間を楽しむ。
「今夜は月が綺麗ね」
 ふと、ベランダから外を見れば、白く輝く月が浮かぶ。
「本当だ。……良かったら外に出てみないか?」
「あら、いいわね」
 皿を片付けながら、確かにと頷いた雪銀は、ふと思いついた様子でシニスティアを誘う。冬の夜、外は寒いかもしれない。でもそれは魅力的な誘いだと、シニスティアは二つ返事で応じた。
 テラスから見上げる月は、本当に美しい。幻想的、とすら感じられる程の輝きに、2人の瞳はしばし、釘付けになる。
 ……いや、それは、シニスティアだけだったのかもしれない。
 夜空を見上げるシニスティア。彼女自身を見つめながら、雪銀はそっと小箱を取り出した。今日の為に用意した、彼女の為だけのプレゼント。だから雪銀はそっと、シニスティアの左手に触れながら、その名を呼んだ。
「何?」
「これを、君に」
 怪訝そうなシニスティアの目の前で、雪銀は、手にした指輪をそっと、彼女の薬指に通した。
 永遠の愛を誓う、その場所に。
「……愛している、シニス」
「ふふ、私もよ」
 雪銀からの告白の言葉を、シニスティアは笑みと共に受け入れる。贈られたばかりの指輪を反対の手で、そっとなぞる彼女の体を、雪銀は愛しそうに抱きしめた。
 優しく落とされた視線を受け入れて、彼を見つめ返すシニスティア。どちらからともなく自然と、その距離は近付いて……。
 月明かりに照らされた、ふたつの影が重なり合う。

 交わされるキスは、とても長くて。それはまるで、永遠の愛を誓う儀式かのよう。
 2人が交わすキスを、聖なる月だけが見守っていて……その光に、きらりと指輪が輝いた。
 恋人達の永遠の愛。それを見届けて、彼らを祝福するかのように――。




イラストレーター名:Hisasi