御巫・終凪 & 氷室・雪那

●聖夜の告白‐First kiss‐

 抱きしめた雪那の体はとても細くて、このまま折れてしまうんじゃないかと思ってしまう。だから優しく抱こうとするけれども、気持ちが追いつかず思わずぎゅっと抱きしめてしまう。
 このまま離してしまうなんて事はしたくない。
 だから終凪はそのまま彼女の耳元に、自分の唇を近づけて囁く。
 その言葉に雪那は、終凪の顔を見上げる。
 驚きに瞬いた瞳。
 まだ耳に残ってる甘い甘い言葉。
 いつもなら、うまくはぐらかしていたのにどうしてだろう。今日は違った。 瞬いた瞳は一瞬で潤み、頬は赤く紅潮し、言葉を選ぶ前に、ただ彼女は頷いた。
 はっきりとした返事ではない。
 だがふたりにはそれで充分で、終凪は再び雪那の体を抱きしめる。
 自然と顔と顔を寄せ合う二人。
 そのまま唇は重ねられる。
 初めての口づけ。
 初めては一瞬で、軽い口づけで直ぐに唇は離れる。
 たった一瞬の口づけなのに、雪那の心の中の氷塊が解けていく。それは唇離れた今も続き、終凪を見つめるもののそれは彼の姿を映さず、どこか別の何かを見ているよう。
 優しい重ねるだけの口付けが、雪那の中の終凪の想いで満ち溢れ。それらが彼女の心の中を満たしていく。
 惚けた表情のままの雪那の表情があまりにも可愛くて、あふれ出す彼女への想いが抑えきれず、終凪は再び彼女の顔に自分の顔を近づける。
 それがもう何を示すのかわかるから、雪那の瞳は静かに閉じられていく。

 二度目のキスは、先ほどの柔らかいキスとは違っていた。
 深く深く。
 相手をもっと感じたくて、相手をもっと分かりたくて。
 どうしてだろう、もっと、もっと、もっと。
 少しだけで良いと思ったのに、重ねれば、抱き合えばそれだけで足りなく感じてしまう。
 だからもっと深く、深く。
 抱きしめた雪那の身体を感じながら、終凪は雪那と出会った瞬間から心を奪われ、そして心底惚れ抜いての今。
 好きでたまらない相手が今、自分の腕の中で、自分の唇に応えてくれる、愛しい恋人になった幸福感に満たされ。
 終凪に抱かれた雪凪は、今も耳元に残る、終凪が囁いた甘く甘く蕩けそうな、その言葉がまだずっと響いている。
 何度も繰り返されるその言葉は、何度も何度も繰り返すたびに、雪那の心を溶かし、いつの間にか終凪の身体をきつく抱きしめていた。




イラストレーター名:Hisasi