●Special Santa Claus!
クリスマスイブの夜。
梗は夜桜の部屋に来て、二人でイブの夜を過ごしていた。
しかしずっと、梗は本を読んでいた。
静かな時間が流れていく。
その静寂を破ったのは夜桜。本を読んでいる梗に話しかけた。
「今日はクリスマスだな」
「正確にはクリスマスイブ、だけどな……」
「知ってるか? クリスマスの夜にはサンタがプレゼントをくれるんだぜ」
「うん、そうらしいな……」
夜桜に話掛けられて、視線を本から彼へと移す梗だったが、それはすぐにまた本に戻されてしまう。
サンタの話は知っていたから。
そんな梗をびっくりさせようと、夜桜は隠しておいた紙袋を取り出すと梗の目の前に置いた。
「なにこれ」
「まぁ見てみろよ」
本を読み始めたものの、目の前に置かれた少し大きな紙袋の存在に、また視線を夜桜に上げる梗。彼に尋ねた言葉には楽しげな笑みしか返ってこず、読みかけの本を床の上に置くと、袋を開けてみた。
袋の中に入っているのは『服』だという事が分かった。
それは赤がメインで、縁取りに白いふわふわがついている。
大きく広げなくてもそれがサンタクロースの衣装だという事がわかり、梗は無言で夜桜を見てみる。
「梗、着てみろよ」
「……」
楽しげな夜桜の表情は変わらず、押しに弱いからかそれとも彼に弱いからか、しぶしぶ梗はサンタの服を着てみることにした。
着始めてから、それはすぐに分かった。
足元がスースーする。
超ミニスカの、ミニスカサンタ服。
着替えたものの、スカートの丈が気になって、裾を押さえながら顔を真っ赤にする。
「よ、夜桜ぁー!」
梗が怒って、夜桜を怒鳴るけれども、そんなことは想定内だからか、夜桜はより一層楽しそうな笑顔になっているのも事実。
「んな怒るなよ。似合ってるぜ」
「……そ、そうか? いやでもなんでミニ……」
似合ってるといわれて嬉しいけれどもこの短さは恥ずかしいと梗が訴えると、夜桜が急に梗に顔を近づけて、にやっと笑う。
「梗に似合うと思ったからだ」
さらりと言った夜桜の言葉に、更に梗の顔が赤くなり、耳まで真っ赤にして照れてしまう。
似合う、可愛いといわれて嬉しいのだけれども、やっぱり照れる。
それはきっと好きな人の前だから。
でも今日は、サンタクロース。
それならプレゼントを渡さないとと、何の前触れもなく近づいたままの梗の頬に口づけひとつ、プレゼント。
メリークリスマス。大好きな君。
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