絢峰・飛鳥 & 漆名・神威

●ただいまラブラブデート中(笑)

 普段はあまり人が使うことがない、街角に備え付けられているベンチも、この期間だけは恋人達の憩いの場となっていた。
「あそこで一休みしよっか?」
「そうだね。一休みしよう」
 ひとつ開いていたベンチを指差す飛鳥に、頷く神威。
 ふたり仲良く隣同士で座ってみると、まだそんなに遅くない時間なのに、寒さを感じる。
「こ、こうすればより暖かいよねっ」
 飛鳥が神威の手をぎゅっと握りしめるものの、照れているのが少し頬が赤く、視線も神威を見ずにどこか違うところを見ている。
 そんな様子の飛鳥を見て、小さく笑ってしまう神威。
「しょうがないな……。飛鳥姫は」
「はう!?」
 飛鳥の耳元で囁くと、少しだけ二人の距離を縮めて、そっと飛鳥の額に神威からの口付け。
 それは意図せぬ出来事。
 飛鳥にとっては突然の出来事。
 でも、何が起こったのか一瞬で分かるから、少しだけ赤かった頬は一気に耳まで真っ赤で、もし煙がでるなら壊れた家電製品のように、煙を頭のてっぺんから噴き出していたかもしれない。、
 それくらいびっくりで、恥ずかしくて、なんともいえない気持ちになる。
「メリークリスマスだよ、飛鳥姫」
「め、メリークリスマス」
 すぐ隣の神威が微笑み告げる言葉は、どこか遠くの方で聞こえるかのよう。
 神威の微笑みを見るのだけど、なんだか頭がぼんやりしてはっきり見えず、飛鳥はふらふらになりながらもなんとか言葉を返すのが精一杯。
 もうどこを見ればいいのか分からずに、飛鳥は空を見上げる。
「あ……雪……」
「ほんとだ……ホワイトクリスマスだね」
 舞い落ちてくる白いものを見ているうちに、さっきまでぼんやりしていた瞳がはっきりとしてくる。
 少し嬉しそうに雪を見上げていると、神威も同じ様に空を見上げていた。
 だから飛鳥はそっと、神威の肩にそーっと自分の頭を預けてみる。
 すると神威が彼女の頭を優しく撫でた。

 そして、繋いだ手はぎゅっと握りしめて。
 ふたりは飽きるまで、そこで雪の降る景色を楽しんだ。




イラストレーター名:Hisasi