●クリスマスだけど、やっチャイナ!
(「いつもより奮発してよかったですね」)
いつになくはしゃいでいる魅臣の姿を見つめて、礼佳は微笑んだ。
今日はクリスマス。せっかくだから、ちょっと贅沢をして、訪れたのは豪奢な店構えの中華料理店。
特別な日。
だからなのか、魅臣は普段の落ち着き払った雰囲気からは想像がつかないくらい、無邪気に思いっきりはしゃいでいる。
「みおくん、行儀よくしなきゃ駄目よ」
「は〜い」
軽く『めっ』っと注意する礼佳も、口とは裏腹に楽しげに笑う。そんな彼女の顔を見ていたら、魅臣までますます嬉しくなってしまう。
魅臣は素直に返事をすると、姿勢をよくして礼儀楽しく料理を待つ。その間も、楽しそうに礼佳へ話をするのは止めない。
子供のようにはしゃぐ魅臣と、それを優しく見守る礼佳。普段誰にも見せないような無防備な笑顔でいる魅臣を見ていると、礼佳は自分まではしゃぎたくなってくるくらい、心が躍るのを感じた。
お腹いっぱいに豪華な料理を食べた二人は、中華料理屋の店先で別れて帰ろうとする。
でも、そんな礼佳を魅臣が呼び止めた。
「家まで送ります」
礼佳は少しビックリしたが、少し照れながらも嬉しそうに差し出された手を取った。粉雪のちらつく雪道を二人並んで歩く。冷え切った空の下、腕から伝わる恋人のぬくもりが暖かくて……幸せな時間がゆっくりと過ぎていく。
「みおくん、送ってくれてありがとう」
「いえ、ボクは礼佳先輩と一緒に帰りたいだけですから」
照れてるのを隠すかのように少しぶっきらぼうに言う魅臣が可愛かった。
「でも、無理に送ってくれなくても良いのよ」
礼佳の言葉に少し心配が混じった複雑そうな顔で魅臣は言う。
「礼佳先輩は優し過ぎるから……時々心配になります。いつも気を使ってくれますけど、もっと、ボクを頼ってくれてもいいんですよ?」
ボクじゃ頼りないですかという魅臣に礼佳は頭を振る。愛しすぎて当たり前すぎて伝えていなかった事が沢山あったんだと今更ながらに思う。
「ううん、私みおくんのこと凄く頼りにしてる。考えすぎちゃって上手く伝えられなくて、そうなることあるけどあまりならないよう気をつけるね。だって……」
少し顔を赤らめながらも魅臣の目を見つめ礼佳はそっと言葉を紡ぐ。
「私、みおくんと一緒に居られるだけで嬉しいから」
恥ずかしげにうつむく恋人を魅臣はぎゅっと抱きしめた。
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