弾堂・丸馬 & 水瀬・燈子

●Moonlight Serenade 〜一緒にいる幸せ〜

 真っ白なシーツにくるまって、月明かりに照らされたベッドの上に2人きり。
 上半身だけ体を起こした丸馬は、何か回想するかのように呟いた。
「もう付き合って一年半かー、あっと言う間だったなぁ」
 出会いやら、付き合ったきっかけやら、共に過ごした思い出やら……思い返して、にっと笑みを浮かべる丸馬。
 それは少し、人の悪い笑みのようにも見えて……にやっと、何か邪な考えを抱いているかのように見えてしまうのは、燈子の気のせいだろうか。
「……な、なによ」
「昔は俺のことさん付けで呼んでたのに……」
「だって最初は先輩だったからっ」
 口を尖らせつつ言う燈子に丸馬は懐かしげな視線。思わず反論する燈子を遮って、丸馬はしみじみとした口調で言い放つ。
「それが今じゃ、あんな可愛らしい声で丸馬丸馬と呼び捨てに――」
「な、なななななっ!?」
 なんの事どれの事なに変なこと言ってんのばかー! と真っ赤になって燈子はまくしたてる。でも、そんな彼女の言葉も、丸馬はしれっと聞き流して。
「ま、細かいことは置いといて……さ。俺、大事なこと言い忘れてるの気付いたんだよな」
 細かいことってなによもう。と頬を膨らませる燈子だが、彼が口にした内容はなんだか気になる。
 言い忘れてること?
 それって、一体なんだろう?
「……大事なこと、ねぇ」
 問いかけるような視線で見つめ返す燈子。それを受け止めて、丸馬は満面の笑みと共に告げた。
「Merry Christmas――愛してるぜ、燈子」
「……もう」
 真剣みを帯びた愛の告白。それは思いがけなくて、でも……すとんと、自分の収まるべきところに届くと、胸を打つように響いて。その言葉に、心が熱を帯びてしまう。
 降参よね、と燈子は心の中で白旗をあげる。
 こんな彼に、弱いのだ。……それを知って、こんな風に振る舞ってくるのだから。本当に。
「……こういう所が、ずるいわよね」
「ん? そう?」
 飄々と受け流して、丸馬は燈子を抱きしめた。
 そのまま、また、ベッドの中へ逆戻り。
 肌と肌が触れ合った場所から、伝わってくる温もりに、そっと燈子は瞳を閉じて。

 月明かりの下、2人は夜の逢瀬を重ねるのだった。




イラストレーター名:Hisasi