●2時間以内に、全部食べられなければ罰ゲーム
クリスマスの夜。
炬燵の上に置かれているのは、ふたりで作った巨大なケーキ。
ふわふわスポンジ、甘〜いクリーム。
周囲を彩るのは、イチゴをはじめとした沢山のフルーツ達とチョコレート。
尤も、その大半を作ったのは、お菓子作りが得意な千歳なのだが、涼だって込めた愛情の量なら負けていない。
「メリークリスマス、姫くん♪」
「ああ、ちーさんもメリークリスマス」
ケーキを挟んで差し向かいに座ったふたりに、2匹の子猫がじゃれてくる。
「それじゃ、早速いただきます」
こんなに大きなケーキ、はたして2人で食べきれるのだろうかと、涼は若干不安に思いながらフォークをとった。
一口目、とっても美味しい。
二口目も、やっぱり美味しい。
全部はちょっと厳しいけれど、これなら沢山食べられそうだと、幸せそうな表情を浮かべる涼。
だがその表情は、満面の笑みとともに発せられた千歳の言葉の前に、あっと言う間に凍りついた。
「ぁ、2時間以内に全部食べれなかったら、罰ゲームだから」
「……!?」
喉に詰まりかけるケーキ。
「それと、姫くんの担当は、全体の8割だからね」
「……!!?」
手落としそうになるフォーク。
あまりの宣告に、涼の頬を冷や汗が伝う。
だがしかし、そうしている間にも時は刻々と過ぎてゆく。
こうなったら覚悟を決めて、一気に食べきる以外に道はない。
けれど、折角最愛の人が作ってくれたケーキを、味わいもせずに呑み込んでしまうのは勿体なさ過ぎる。
「……うー…。ぉ、美味しくて早食いしたくないじゃねーかっ!」
笑顔の千歳が見守る中、目に涙を浮かべつつ、ケーキを頬張りまくる涼。
どうにか7割近くまで進んだが、胃袋の許容量はもう限界。けれど立ち止まっている時間は無い。
「お…美味しいけど……苦しい……」
「ほらほら姫くーん、急がないと罰ゲームだよー?」
時計の針は、タイムリミットまで既に10分を切っていた。
はたして涼の運命や、いかに………!?
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