足利・灯萌 & 天知・惣七

●プレゼント…もらってください……

 ゆさゆさ。
 ゆさゆさ。
「ん……?」
 惣七は誰かに起こされて、ベッドの上で目を開けた。

 視線が合う。
 そこにいたのは、自分の上に乗っかった灯萌だった。

「え、えええっ!?」
「……こんばんは」
 目を丸くする惣七に、淡々と挨拶する灯萌。だがそれどころじゃないと惣七は口をぱくぱくさせて。
「と、とりあえず、この状況に対する説明が欲しいんだけど」
 なんだってネグリジェ姿の彼女と、こんなシチュエーションになっているのだろう?
 ……よく見れば彼女の背後には、なんか天井裏への出入口が開け放たれているのが見えるし?
 もしかして、もしかしなくても、あんな所から部屋に入って来たって事なのか!?
「……中学になると同人デビューする子も増えます……ぶっちゃけ『小学生(エロ)同人作家』というボクの希少価値がなくなるわけで……」
「ガン無視!?」
 つらつらと紡ぐ灯萌にショックを受ける惣七だが、そんな彼のことをじっと見つめて灯萌は続けた。
「その前に歳末ビッグセール……もらって下さい……」
「も、貰えと言われても!」
 何をどう。具体的に何をどうしてどうしろと!
「……ああ、大丈夫。歳末セールと言っても……はつも……」
「だぁぁぁぁ!」
 惣七は思わず頭を抱えるしかない。だって彼女は小学6年生で自分は仮にも高校生なのだし?
 でも、そんな惣七の様子に、灯萌は怪訝そうに首を傾げた。
「? なにか不満でも……?」
「不満はないけど、君の将来が不安だよ!」
「上手いことを言う……」
 感心した様子の灯萌に小さく溜息。とりあえず自分の上から降りるよう告げて、時計を見れば夜遅く。さて、とりあえず彼女を送って行こうかと思えば……。
「って、なんで!?」
「だって……お買い上げ、ありがとうございます?」
 ごそごそベッドに潜り込んだ灯萌の言葉に、その表現はいかがなものかと頭を押さえる惣七だが、すっかりそこに収まってもう動きそうに無いのを見ると、送るのは諦めて、一晩だけ彼女を部屋に泊めることにして。
「……する?」
「しません! 何もしないよ!」
「……何を、とは……言ってないのに……」
 全力で否定する惣七の姿に、ほんの少しだけ笑って、灯萌は瞳を閉じた。
「……おやすみなさい」
「おやすみ」
 惣七もベッドに戻ると、同じように言葉を返して。……ほんの少し触れた腕から、指先から伝わる体温を感じながら、眠りにつく。
 カーテン越しの窓の外では、いつしか、はらはらと雪が降り始めていた。




イラストレーター名:Hisasi