●聖夜の誓い 〜 Promise Ring 〜
クリスマス当日。
久狼はクリスマスツリーの下を待ち合わせの場所として選び、美咲が来るまで時間を潰して待っていた。
辺りには美しいイルミネーションが輝いており、ポツポツと雪が降り始めている。
「ご、ごめんなさい。ひょっとして、待ちましたか?」
それからさほど時間が掛からず、美咲が真っ白な息を吐きながら、待ちあわせ場所にやってきた。
「いや、全然……」
久狼は彼女の問いかけに笑顔で返し、クリスマスカードと一緒に小さな箱をプレゼントする。
その小さな箱にはシルバーリングが入っており、美咲が幸せそうな表情を浮かべて瞳をキラキラと輝かせた。
「……まあ、こちらは……クリスマスプレゼントと思ってもらって問題無しです」
話している途中で余計に恥ずかしくなってしまい、久狼がそれを誤魔化すようにして、そっぽを向いて話し始める。
それでも、恥ずかしい気持ちを抑える事が出来なかったので、もしかすると美咲には気づかれていたかも知れない。
だからと言って中途半端なところで止めるわけにもいかないので、覚悟を決めて最後まで言う以外の選択肢が残されていなかった。
「上手く言葉に出来ないですが……。……私は、美咲が好きです。これからも、一緒に歩んでいきたいと、思ってます」
深呼吸をして何とか心を落ち着かせ、久狼が真剣な表情を浮かべて告白する。
「も、もちろん、今すぐ無理に答えを出さなくてもいいです……。ゆっくり考えて……考えが纏まったら言ってください」
あまりにも答えを急ぎすぎてしまったな、と反省し、久狼が慌てた様子で答えを付け加えた。
「……えっ? あの……。答え……、今でもいいですか?」
美咲はシルバーリングをプレゼントされた事に驚きつつも、困惑した表情は浮かべておらず、うっすらと涙を浮かべながら、幸せそうな笑顔でハッキリと答える。
「私も久狼さんと一緒に……、ずっと一緒に歩いて行きます」
その答えを美咲から聞いてホッとした表情を浮かべ、久狼は優しく彼女に微笑みかけ、その薬指に指輪を嵌めるのだった。
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