●ししおどしのじんぐるべる
今日はクリスマス。
決して、お正月ではない。
まるでクリスマスに真正面から、喧嘩を売り込むように優雅なお茶会を開いたとものとなのは。
場所は富豪の家柄である、なのはの家の本格的な茶室。
しかも二人ともしっかりと本振袖を着込んで本格的。
畳の上にきちんと座り、お茶をたてるメイドのともの。
メイドの時給は255円。
とものの立てたお茶を慣れた手つきで、作法どおりに優雅に飲むなのは。
「とものちゃん、大和撫子たるものクリスマスだからと浮かれすぎてはいけませんよ」
「ふ、お嬢様。私をそこいらの俗物と同じに扱って貰っては困ります。今晩のお嬢様のお食事をトナカイの馬刺しにしてくれましょうかと思うほどワビサビに染まっていますよ?」
空になった茶碗をもどしつつ、とものを見てなのはが釘を刺す。
なのはに釘を刺されても、ふっと勝ち誇ったように当然だと笑うともの。大和撫子だと強調するものの、何かおかしい返答の言葉。
細かいことは気にしないふたり。
ふっと、何やら意味深に笑いあう。
かこーん。
ししおどしの音が響いた。
「とものちゃんのその髪飾りはなんでしょう?」
「そういうお嬢様こそ、頭の上に乗せているものはなんですか?」
なのはの視線の先は、とものの髪飾り。髪飾りは雪だるまだった。
とものの視線の先は、なのはの頭。そこには煌びやかな振袖姿には似合わないサンタ帽。
良く見ていけば、いろいろとおかしい。
なのはが今食べようとしている、お茶請けは、和菓子なのだけれどもその天辺には、何故か砂糖菓子のサンタクロースが乗っかっている。
とものの手にある、茶杓の持ち手は赤と緑のリボンで可愛らしく結ばれている。
茶せんには雪だるま。
クリスマスなんてと、言いながら。
お茶会だと、言いながら。
かこーん。
ししおどしの音が響いた。
その後に聞こえてきたのは、お茶を飲む音。
それはどちらが飲んだ音なのか分からないけれども、なんだかんだ言いながら、クリスマス気分で十分に浮かれている二人のお茶会はまだまだ続きそうである。
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