夕凪・朔哉 & 柊暮・日景

●クリスマス2008 うさぎと家族

 雪野原に沢山の雪うさぎ。
 それらは日景が朔哉を誘い二人で作ったもの。
 他愛もない話しながら、また一匹、可愛らしいうさぎが出来上がる。
 手のひらサイズの小さな雪うさぎの全部に、日景のこだわりが現れている。
「雪うさぎは、耳が葉っぱで目は南天の実な?」
 日景の言葉に朔哉はこくんと頷く。

 そうしてまたひとつ、手のひらの上でうさぎが生まれる。
「プレゼントは、サンタからの方が良かったか?」
「いや………日景からの方が、嬉しい……」
 手のひらの上のうさぎに命を吹き込むように、南天の赤い実の目を白いうさぎへとつける朔哉に、日景が問いかける。
 日景は出来上がったまた一匹を、雪野原にそっと置く。
 ペタンと、葉っぱの耳をくっつける朔哉がテレながら答えるのを見て、小さく微笑む。

 白い雪の上に、白い雪うさぎ。
 赤いおめめに、緑のお耳。
 小さな手のひらサイズのうさぎさん。
 あっちを向くもの、こっちを向くもの。
 ひとりぼっちの。
 寄り添ってるの。
 見渡せば、本当に沢山の雪うさぎを作ったことに気が付く。
「雪うさぎ、沢山いるから溶けた時ちょっぴり悲しいなぁ……」
「……この雪うさぎは、溶けたらもう見れないけど……写真とかに撮っておけば、いつでも見れる……」
 立ち上がって雪野原に散らばる雪うさぎを見て、いつまでもこのままではなく、いつか溶けてしまうことを思うと、ちょっと切なくなった日景。それに朔哉が出来上がった一匹の雪うさぎを雪に返しながら言う。
 朔哉からの言葉を聴いて、少し曇っていた日景の表情が晴れる。
「う、うんうん せや! 年中いつでも見れるやんな」
 そうして持って来たカメラでこの風景を収めていく。
 この景色の全景に、つくった雪うさぎたちのアップなど。
 今日作った雪うさぎは、そのうちとけて消えてしまうかもしれないけど、写真の中の雪うさぎたちにならいつでも会いえるから。

 今日の雪うさぎたちと朔哉との楽しい思い出。
 日景のカメラには沢山の、雪うさぎと朔哉のはにかんだ笑顔が収められた。




イラストレーター名:パプリカ紳士