界・周 & 鈴凛・ティアチェリカ

●隣に居る温かさ

「あまりはしゃいで転ぶなよ」
 今年のクリスマスは外に出てみようと思い、周がダークグレーのトレンチコートを身に纏い、彼女には白のダッフルコートを着せて、駅前にある公園を目指す。
(「ティーも、もう中学生……。僕が一緒についていれば、誰から何も言われる事がないはずだ……」)
 そんな事を考えながら、周が彼女に視線を送る。
「大丈夫ですよ。こうやって一緒にいれば、転ぶ事はありません」
 えっへんと胸を張りながら、鈴凛が周の服の袖を掴む。
 ……今日はクリスマス。
 つまり、恋人の日。
 ならば、目的はひとつ。
 沢山、周とラブラブする事だ。
(「……いつの間にか、背も伸びたんだな」)
 自分に寄り添う鈴凛を眺め、周がしみじみとした表情を浮かべる。
「あれ? どうかしたんですか?」
 不思議そうに首を傾げ、鈴凛が周の顔を覗き込む。
「い、いや……。ちょっと考え事をしていただけだ」
 苦笑いを浮かべながら、周が鈴凛と仲良く手を繋ぐ。
「少し寒くなってきましたね。これを巻いておきましょう」
 満面の笑みを浮かべながら、鈴凛がこの日のために作ったマフラーを首に巻く。
 マフラーは二人で首に巻けるような大きめサイズ。
 一応、今夜は寝るまで一緒に巻いておくつもり。
 ……きゃっ。
「ちょっと、ここからじゃ見えにくいか」
 駅前の公園には、沢山のカップル。
 みんなクリスマスのイルミネーションが目当てのようだ。
「み、見えませんね」
 一生懸命、背伸びする。
 ……見えない。
 必死にジャンプ。
 何とか見えた。
「無理をするな。こうすれば見えるだろ」
 そう言って周が、お姫様抱っこ。
「綺麗ですね〜♪」
 鈴凛の驚きが伝わってくる。
「ここまで来た甲斐があったな」
 それは自分自身にも言える言葉。
「メリークリスマス、周♪」
 鈴凛からのプレゼント。
「メリークリスマス、ティー」
 そして、周からも……。
 凝ったプレゼントはないが、来年こそはきっと……。
 これからもずっと一緒にいられるように願いを込め、周が鈴凛の身体をギュッと抱きしめた。




イラストレーター名:wane