雲雀・紫衣 & マコト・ジョーンズ

●二人で作る甘い時間

 焼き上がりを知らせるベルが鳴る。紫衣がその音に気づき、ベルを鳴らすオーブンを開いた。
 暖かい熱気と共に、ふんわりと焼きあがったスポンジケーキが姿を現す。
「上手く焼きあがったようですね」
 隣に居るマコトにそう呼びかけ、紫衣は笑みを浮かべた。

 今、紫衣とマコトはケーキ作りの真っ最中。
 しかも一つでないところがポイント……かもしれない。確認しただけで、大きなケーキが3つ、ある。
 二つは完成し、最後のショートケーキのデコレーションに取り掛かっているようだ。
「こんな感じでしょうか?」
 クリームを絞りながら、マコトは紫衣に尋ねる。
「ええ、お上手ですよ。それでは、私は苺を乗せていきますね」
 紫衣はマコトのデコレーションを褒めながら、笑顔で苺を乗せていく。
 他のケーキもこうして、二人で作っていった。
 そして、もうすぐ最後のケーキも完成する。

 ぽんと、紫衣は最後の苺を乗せた。全てのケーキが完成した。
 二人は思わず顔を見合わせ、笑みを零す。
「これで完成ですね。……早速、食べます?」
 紫衣は首をかしげて、マコトに尋ねる。
「ん……そうしましょうか。切るのは俺に任せてください」
 しばし考えた後、マコトはそう申し出て、さっそくとナイフを用意していく。
 その間に紫衣は、テーブルに乗ったままの道具を片付け始めた。

 切り分けられたケーキ。用意されたシャンメリー。側には輝くクリスマスツリー。
「メリークリスマス」
 かちんとグラスが重ねられる。そして、二人は完成したばかりのケーキを頬張った。
「そういえば……」
「どうかしましたか?」
 マコトの言葉に紫衣が顔を上げる。
「たいしたことはないんですが……初めてだなと思いまして」
「初めて?」
 こくりと頷き、マコトは続ける。
「その、恋人同士で過ごすのは初めてですので……ちょっと緊張してます」
 マコトのその告白に、紫衣も思わず頬を赤く染める。
「あっ……マコトさん、頬に……」
 ふと、マコトの頬にクリームが付いてるのを見つけた紫衣。すっとすくうように拭ってやる。
「し、紫衣先輩っ!?」
 マコトは赤くなっていた頬を更に赤くさせていた。
「………」
 頬を染めつつ、見つめあい、そして出た言葉は。
「「……大好きです」」
 お互い同じことを思っていた。しかも、同じタイミングで、同じ言葉を。
 自然に笑みが浮かび、笑い声が響いていく。
 甘いクリスマス。二人にとっては、忘れられない思い出のクリスマス……。




イラストレーター名:みろまる