●SWEET NIGHT
「そうそう。渡したいものがあるんだ」
……クリスマスの夜。
大木の如く聳え立った、街角の大きなクリスマスツリーを眺め、奏が何かを思い出した様子で懐を探る。
「メリークリスマス。それから、誕生日おめでとっ!」
照れた様子ではにかみながら、奏が彼女にクリスマスプレゼントを渡す。
そのプレゼントは、蝶の形のローズクォーツのあしらわれた銀色のヘアピン。
幻想的なイルミネーションの光を浴び、今も飛び立ちそうなほど、美しい光を放っている。
「それじゃ、私からもプレゼントです……」
そう言って綺羅も奏とプレゼントを交換するようにして、自分が持ってきたプレゼントを手渡した。
それは苺がたくさん乗っている真っ白なブッシュドノエル。
「うわっ、すごい……! ホントにケーキを手作りしてくれるなんて思わなかった! ありがとうね、本当にっ!」
感動した様子で瞳をランランと輝かせ、奏が彼女を見つめてお礼を言う。
彼女の手作りケーキはまるで雪の如く神秘的で、食べてしまうのがもったいないほどだった。
「ここで今すぐ食べられないのが、すごく残念。帰ったら、大事に食べるね」
嬉しそうな表情を浮かべ、奏がブッシュドノエルを大切にしまう。
「えっと、私も大事に使いますね……。それじゃ、早速つけてみますね」
銀色のヘアピンを髪につけ、綺羅がクリスマスツリーを見上げて、楽しそうな表情を浮かべる。
「今年も奏とクリスマスを過ごせて嬉しいのです」
幸せな気持ちを噛み締めるようにして、綺羅が自分の思いを奏に伝えた。
「来年も、また奏のためにケーキ作りますね。だから、またこうして一緒にツリーを見に来て欲しいです」
不安げな表情を浮かべ、綺羅が奏に視線を送る。
「ああ、来年も再来年も、ずっと一緒に居ような」
彼女の不安を掻き消すようにして笑みを浮かべ、力強く綺羅を抱き寄せ、その頬にキスをした。
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