●夜の公園で、始めての
クリスマスで賑わう、夜の街。
イルミネーションの輝きが、ふたりの心を和ませてくれる。
デートに出掛けた2人は、公園にあるクリスマスツリーの前で、恥ずかしそうに見つめ合っていた。
……はじめてのキス。
いざキスをしようとなると、緊張感がふたりを包んだ。
「……え、と、は、初めてな、の、で、その」
うまく言葉が続かない。
頭の中には言うべき言葉が浮かんでいるが、どうしてもそれを口にする事が出来なかった。
それでも、勇気を振り絞り、吐き出すようにして口にする。
「やさしく、し、てく、だ、さ……い」
途端に顔が真っ赤になった。
頭に浮かんでいるのは、慧介とのキスシーン。
その事を考えるだけで、全身の体温が上がっていく。
「……実は僕もですよ。初めて同士ですね」
彼女の顔をマジマジと見つめ、慧介がクスリと笑う。
……ふたりとも顔が赤い。
お互いの心音が聞こえるほど、ふたりは緊張しており、わずかに身体が震えている。
それは、恐怖感と言うよりも、緊張感……。
身体よりも、気持ちの方が先行しているせいで、なかなか行動に移せない。
そのため、夏奈美は恥ずかしさとうれしさが入り混じったような表情を浮かべ、頬を赤らめたままゆっくりと目を閉じて背伸びをした。
慧介も緊張と照れで頬を赤くしつつ、覚悟を決めて彼女にキスをする。
その途端、ふたりは例えようの無い幸福感に包まれ、いつも以上に相手の存在を感じる事が出来た。
「……夏奈美さん。大好きですよ」
名残惜しそうに唇を離し、慧介が優しく微笑みかける。
キスをしたせいかも知れないが、いままで以上に彼女の存在を身近に感じる事が出来た。
「……わ、たし、もで、す」
どうやら彼女も同じ気持ちになっていたらしく、そう答えてさらに顔を真っ赤にする。
だが、それ以上に相手を愛しく思う気持ちが強くなり、ずっとこの関係が続けばいい、と心の底から思うのだった。
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