御陵・敬介 & 東雲・春夜

●ロンリーメリークリスマス

「……ふ……ふふふ……。まさか自分が今年こうなるたぁ夢にも思わなかったぜ……」
 何処か遠くを見つめながら、敬介が乾いた笑いを響かせる。
 敬介達はお互いクリスマスを迎える前に恋人と別れてしまい、独り身のまま寂しい日々を過ごしていた。
 そんな辛い日々から逃れるようにするため、ふたりで一緒にクリスマスを過ごそうと言う事になったようである。
 だが、彼らのいる部屋はどんよりとした空気が漂っており、灯りはケーキのロウソクとツリーの電飾のみ。
 そこで、ふたりは夕食の置いてあるテーブルを挟み、向かい合わせになるような形で座っていた。
「それ言うなよ……。お互い悲しくなるだろ……ううっ……」
 『せっかく忘れていたのに』と言いたげな表情を浮かべ、春夜がションボリとした様子で溜息を漏らす。
 その途端に悲しい気持ちが込み上げ、ふたりで一緒に涙がほろり……。
 『どうして、こんなことになってしまったのだろうか?』と自問自答してしまったが、いまさら解決法が見つかったところで、どうしようもない事なので、ふたりは考える事を……止めた。
「でも、はるやん……! 俺たちはこれからも、ずっと親友だぜ!」
 ぐいっと力強く涙を拭い、敬介が春夜の肩をぽふりと叩く。
 『続けて、俺達は負け犬なんかじゃないぜ』と付け加えようとしたが、その一言がロンギヌスの槍並に破壊力を持つ可能性が秘められていたので、躊躇う事無く記憶の狭間に放り込む。
「勿論だ敬ちゃん……! 俺たちはずっと相棒だ!」
 その途端に期待していた言葉が春夜の口から漏れ、『持つべきものは友達だな』と改めて実感し、ガシィッと抱き合い、うおおんと漢泣きをした。
「……つーわけで、これはプレゼントだ。受け取れ、相棒!」
 『これが親友の証だっ!』と言わんばかりの雰囲気を漂わせ、敬介が綺麗に包装された小さな包みを春夜に渡す。
 それに合わせて春夜からもプレゼントを手渡し、『お互いに同じ事を考えていたんだな』という気持ちが過ぎり、さらに友情を頑ななものにしていく。
「ふっ……、ロンリーメリークリスマス……!」  敬介がノンアルコールのシャンメリーが注がれたシャンパングラスを掲げた。
 春夜も口元は笑顔を浮かべたまま、敬介と同じようにしてシャンパングラスを高々と掲げる。
「「乾杯!!」」
 その言葉と共にホロリと涙が零れ落ち、お互いに『来年は絶対に寂しいクリスマスを送らないぞ』と心の中で誓いを立てるのであった。




イラストレーター名:龍