●first kiss
「今日一日、楽しかったな」
「うん。楽しかったし、おいしかった」
嵐と満は街でウィンドショッピングを楽しんだ後、楽しそうに会話をかわし、夜の街を歩いていた。
いつもと同じように満のペースであちこちを引っ張りまわされ、買い物よりも食べまわりが多かったので、けっこう行列に並ぶ事も多かったようである。
だが、終始笑顔の満を見ていると、一気に疲れが吹き飛んで、とても楽しい気分になり、自然と気持ちも落ち着いていった。
(「べた惚れだね。我ながら」)
もちろん、悪い気はしない。
むしろ、いい気分であった。
ただし、いつものように引っ張りまわされるだけなのは……、マズイ。
せっかくのクリスマスなのだから、何もしないで彼女と別れる訳にはいかなかった。
だが、残されている時間は、ごくわずか。
早めに行動しなければ、何もかも手遅れになってしまう。
「……少し休もうか。ツリーも綺麗だしさ」
そう言って、ちょうど大きなクリスマスツリーが見える場所にあったベンチに座る。
二人きりのいい雰囲気に、少し胸がドキドキした。
途中で何か喋ろうと思ったが、そういう雰囲気ではない。
しばらくすると満が、嵐の肩に頭を乗せてきた。
「えと、満?」
「キス、してほしいな」
満の言葉に驚き、嵐が呆気に取られる。
途端に身体が勝手に動き、満の肩をそっと抱く。
そのため、満がそっと目を閉じ、黙って嵐からの口付けを待つ。
嵐もそれに応えるようにして目を閉じ、ゆっくりと唇を重ね合わせ、とても自然に彼女とキスをした。
first kissが甘いというのは、どうやら本当の事だったらしい。
長いキスを終えた後、お互い真っ赤だった。
「えーっと……大好きだ。愛してる」
何も考えずに言葉が出た。
「うん……大好きだよ、愛してる♪」
そして二度目のキス。
二回目のキスは、もっと甘かった。
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